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  • 【東大生に聞いた】心理学で社会に貢献【東大文学部社会心理学専修】

    【東大生に聞いた】心理学で社会に貢献【東大文学部社会心理学専修】

    東大生へのインタビュー企画文学部編、最終回は社会心理学を学ぶ3年生Yさんへのインタビューです!

    文学部で扱われる学問の中では比較的理系寄りである社会心理学。心理学の一分野ではありますが、よく知らない方も多いのではないでしょうか。

    今回のインタビューでは、社会心理学専修に所属するYさんが、社会心理学の特徴や魅力について詳しく教えてくれました!

    【プロフィール】※情報はインタビュー時のものです
    ・名前:Yさん
    ・学年:学部3年
    ・学部・学科(専修):文学部・社会心理学専修
    ・出身:東京都・開成高校


    社会心理学専修で学んでいること

    ── Yさんが専修で学んでいることを教えてください。

    社会心理学を勉強しています。

    社会心理学とは、個人が他者や集団をどのように認知しているか、集団がどういった行動を取りやすいか、といった社会的場面に焦点を当てた心理学のことです。

    今は、集団規範がどのように生まれて、維持されるのかというプロセスについて重点的に学んでいます。

    ── 具体的に言うと?

    たとえば、「多元的無知」という現象があります。
    飲み会で「自分は楽しくはないが、他のみんなは楽しいと感じているのだろう」ということを、そこにいる全員が考えている。
    このように、本来みんなに支持されていない規範が、結果として維持される現象を多元的無知と言います。この規範がどのように生まれ、維持され、解消されるのかということを学んでいます。

    ── 学部全体だとどんな勉強をしていますか?

    社会的場面での意思決定などを扱っています。対人関係の中で、どのように他の人の心情を感じ取って自分の行動を選択するのか、などがその例です。

    ── Yさんが今後個人的に勉強したいことはありますか?

    集団関係、対人関係の心理学の基礎的なメカニズムをもとに、実生活の様々な場面やシステムで応用していくことに興味があります。

    ── 基礎を勉強するというよりは、社会への応用というイメージですね。


    防災でも政治でも。社会を動かす心理学

    ──  実際にYさんが学んでいることは、社会にどのように活用されていると感じますか? 今後の展望などもあれば教えてください。

    今後の展望的なところで言うと、僕が興味があるのは、災害分野での働きかけです。

    たとえば、災害の対策というと、ダムや堤防の建築といったものを想像する人が多いと思います。でも実は、避難誘導の言葉を工夫するだけでも、人の心理を動かすことができるんですよね。

    ── なるほど。具体例を教えてもらってもいいですか?

    明らかにおかしいことが起こっているのに、「大丈夫、正常だ」というバイアスがかかって動けなくなってしまう、といった心理現象があります。

    このような現象を「正常性バイアス」というんですが、避難誘導の言葉遣いや、避難指示の制度設計といった工夫をすることで、このような現象を防ぐことも可能です。

    小さな働きかけで、多くの人の命を救える可能性があるのが興味深いなと感じています。

    ── 災害分野以外では、どのようなものがありますか?

    公共的な社会システムに応用したものとして、同調圧力を利用したイギリスの事例があります。

    納税を滞納している人に催促の通知を出すときに、「この手紙が届いた10人中9人は期限通り納税しています」と一言付け加えるだけで、納税率が上がったようです。

    設備などのシステム設計にはお金がかかります。一方で、この一文を加えるだけなら、そのインク代しかかからないのに、大きな効果が出る。

    このように、心理メカニズムを踏まえた働きかけによって、できることが色々あるのではないかと思っています。

    ── ありがとうございます。心理面への働きかけで社会を動かせるというのは面白いですね。


    研究の成果が社会に直結。心理学の魅力

    ── ここまでは、現在勉強していることや今後の展望について話してもらいましたが、Yさんは、社会心理学のどんな点に対して魅力を感じていますか?

    実社会との結びつきが強いところが好きです。僕は文学部ではありますが、文学や歴史学といった学問よりは、実社会に結びつく働きかけなどに興味があるので、その点で自分に合っているなと感じます。

    また、心理学は発展途上な学問なので、研究する余地が多く残されていて、やりがいがあるのも魅力です。

    ── 心理学といえば、心理テストや、TV番組で見るような、人の心を読んだり操ったりするものを思い浮かべる人が多いですよね。

    そうですね。その辺は学問的な心理学とは違ったエンターテインメントなんですが、学問的なものだと思われていることも多いですね(笑)。

    学問的なところだと、カウンセリングのイメージもあるかと思いますが、こちらは臨床心理学という分野で、心理学や社会心理学とは別物になりますね。

    ── どちらかと言えば、人間対人間のアプローチというイメージを持つ人が多いのかなという印象です。心理学を社会にどう役立てるかというのは、普通の人はあまり知らない、新しい観点なのではないでしょうか。


    様々な学問との結びつき

    ── 社会心理学と関連がありそうな他の学問があれば教えてください。

    やはり、心理学の領域に含まれる学問とは関連が深いと思います。

    社会心理学は、人や集団の繋がりといった社会的場面が対象ですが、認知心理学だと、触覚や味覚などの感覚、時間感覚や平衡感覚など、もっと生物学的な事象も扱います。そう考えると、脳科学も密接に関わってきます。

    また、教育にどう心理学を活用していくかを考える教育心理学や、カウンセリングのような臨床心理学も関連があります。

    ── 心理学系以外では?

    進化論の観点から心理現象を説明する進化心理学が最近流行っているので、進化生物学も関連していますね。

    また、行動経済学は「経済」ですが、人間が周囲の環境に応じてどう行動するかということを学ぶので、社会心理学と密接な関係にあります。

    ── 消費者心理などですね。心理学と一括りで言っても、脳科学のような理系的なものから、経済学といった文系の学問まで幅広くカバーしているのですね。


    高校生のうちに学ぶべきこととは

    ──  大学で心理学を学びたいと思っている高校生が学んでおいた方がいいことや、高校の勉強で心理学と関連が深いものはありますか。

    高校で心理学などは学んでこなかったと思うので、あまり思いつきませんね……。

    強いて言えば、心理学では実験のデータを取り、統計的に解析をするのが一連の流れなので、論文を読むにも、自分で研究をするにも、統計の知識が必要です。僕はそれをサボったので、大学に入ってから苦労しました(笑)。

    また、先ほど言ったように進化的な観点が心理学では大事になるので、生物で進化の授業があれば、真面目に受けておくと、後から繋がりに気付いて「なるほど ! 」と感じると思います。

    ── 意外と理系寄りですね。統計は今までの話であまり出てきていませんでしたが、大学に入ってから勉強したのですか?

    前期課程では統計の授業があるんですが、僕は取っていませんでした。

    後期課程でも入門から教えてくれる授業がありますが、なかなか奥が深くスピードも早いので、苦手だと理解が大変です。

    ── なるほど、早い段階から統計に触れておくと有利になるかもしれませんね。もちろん、統計は心理以外にも、経済など幅広い分野で使えますからね。


    社会心理学の世界に踏み込むまで

    ── 続いては、Yさんの進路選択について聞いていきたいと思います。まず、高校時代には、どのようにして大学や科類を選びましたか?

    正直、選んだという感じではなかったですね。進学選択制度があるのは知っていましたが、元々やりたいことがほとんどありませんでした。

    僕は浪人しているんですが、1年目は何も考えずに何となくで文二を受けました(笑)。流石に一度落ちた後はもう少し考えて、法や経済にはあまり興味がなかったので、文三を選びました。

    ── 文一が法学で文二が経済という大まかな区分けはありますからね。Yさんは開成高校出身ですが、東大を目指すことに関してのハードルはありましたか?

    そうですね……周りにも東大志望者はたくさんいたので、正直に言えばあまりありませんでした。

    ── さすが進学校ですね。法と経済に興味がなかったと言っていましたが、高校時代はどんな学問に興味がありましたか?

    社会学には少し興味がありました。社会問題に関心があったので、そういうものを扱うなら、ジェンダーなどで何かと話題な社会学かなと。特に、ジェンダーを含めた家族の役割について興味がありました。

    ── 大学入学後、今の学科を選んだきっかけなどはありますか?

    前期教養のときから、心理系の授業は面白いと思っていました。進化に関する心理学を扱う「適応行動論」や、社会心理学を扱う「社会行動論」が特に印象に残ってます。

    ── 大学の授業が決め手になったんですね。

    はい。また、社会学にも興味があったのですが、人文的な、いわゆるデータを重視しない研究は個人的には好きではなくて。統計を用いて客観的に分析する社会心理学が自分に合っていました。

    ── 科学的で、少し理系の要素があるところに惹かれたということですね。社会心理学には理系出身の人も多いんですか?

    社会心理学は心理学の領域では文系に近い学問ではあるので、文系出身の方が多いですね。

    ただ、統計を扱う分、文学部の中では間違いなく理系寄りです。僕の学年は偶然全員文系出身ですが、例年は理系から進学する人も何人かいるようです。

    ── 所属する専修の魅力などを教えてください。

    同期が約20人、教授も5人と多くないので、教授や同期たちと密に関わることができます。

    また、同期の人たちが優秀で、同じテーマでも自分とは違う視点で考えていたり、真面目に勉強している人が多かったりと、刺激を受けられる環境だなと感じています。

    ── 比較的小規模な分、学生間の関係性が深いんですね。

    密にディスカッションをしたり、一緒に実験デザインをしたりと、前期課程とは違った雰囲気です。人数が少ない分、一人一人が責任感を感じられたり、自分たちの裁量で色々と議論のテーマを決められたりと、身につくことが多いです。


    学んだことを活かせる将来へ

    ── 次に卒業後の進路について伺いたいと思います。まずYさんは、大学卒業後どのような進路を考えていますか?

    未定です(笑)。

    まず大学院に進学するか悩んでいて、もし進学するとすれば、社会システムの実装など、社会心理をどのように応用するかに着目した研究をしたいと思ってます。

    就職するにしても、何らかの場面で心理学を生かしたいですね。

    なんとなくですが、国家公務員として社会システムに直接関わることや、消費者心理などを学び、マーケティングに携わることに興味あります。

    ── 自分が大学で学んだことが役立つような環境で働きたいと考えているんですね。社会心理学専修の人たちは、一般的にどんな進路に進むことが多いんでしょうか。

    大学院に行く人は少なめですね。去年は20人中2人、多くても4、5人くらいだったと思います。就職については、業界などはあまり詳しく知りませんが、民間就職が多いと言われています。

    ── 大学院に行く人は意外と少ないんですね。

    教育心理など、他の心理学分野では、大学院に行く人が多いところもあります。大学院に行かないと取れない資格がある場合もありますね。


    高校生にメッセージ

    ── 最後に記事を読んでいるであろう高校生に一言お願いします。

    僕は今文学部の3年生ですが、自分がどの学部でどんな勉強をしているのか、大学入学前には想像できていませんでした。

    自分が何をするのかは、自分がどんなものに触れるのかによって変わってきます。

    今のうちからこのような記事を読んでくれるのも嬉しいですし、情報をたくさん集めて、自分のやりたいことをできるだけ固めておくと、役に立つと思います。

    ただ、高校生のうちに理解できる情報には限界があり、やりたいことが後から変わることもあるので、気負いすぎず、気楽に自分の進路を考えてください。


    全3回の文学部編はここまでです。いかがだったでしょうか?

    東大の文学部では、今回の企画で紹介した国文学、西洋史学、社会心理学の他にも多くの学問について学ぶことができます。

    詳しく知りたい方は、東大文学部のホームページをご覧ください!

    次回のインタビュー企画もお楽しみに!

  • 【東大生に聞いた】好奇心のおもむくままに【大学院西洋史学研究室】

    【東大生に聞いた】好奇心のおもむくままに【大学院西洋史学研究室】

    東大生へのインタビュー企画文学部編、第2回に登場するのは、西洋史学を学ぶ I さんです!
    この企画で初めてとなる、東大の大学院に進学された方へのインタビューです。

    西洋史を含めた歴史学に興味のある人はもちろん、東大の大学院に少しでも興味がある人も必見です!

    【プロフィール】※情報はインタビュー時のものです
    ・名前: I さん
    ・学年:修士1年
    ・研究科・専攻:人文社会系研究科・欧米系文化研究専攻(西洋史学)
    ・出身:福島県・会津学鳳高校


    近代スコットランド史を勉強中

    ── 現在、 I さんはどのような勉強をされているのか教えてください。

    西洋史学研究室で、西洋史、特に近代スコットランド史を勉強しています。

    今学期は近代イギリス史やフランス史のゼミも受けていますし、今年から単位互換制度で早稲田大学と京都大学のゼミも取っています。

    ── 大学院生とはいえ、幅広く学んでいるという感じなんですね。京都大学のゼミも取れるというのは、オンラインだからですか?

    京都大学はオンラインで参加していますが、早稲田大学は対面で授業をやっているので、週に2回ほど早稲田大学に行っています。早稲田生みたいですね(笑)。

    ── 東大にはどれくらい行っているんですか?

    東大の授業は全てオンラインなのですが、図書館で作業することが多いので、本郷キャンパスの総合図書館には週に3回ほど行っています。

    ── 早稲田よりはちょっと多いくらいですかね(笑)。ありがとうございます。


    近代スコットランド史の勉強とは?

    ── 特に勉強しているのは近代スコットランド史だと思うのですが、具体的にどのような勉強をしているのか教えていただけますか。

    19世紀スコットランドのナショナリズムについて勉強しています。

    スコットランドは、現在はイギリスの一部ですが、18世紀までは独立した王国でした。そのような歴史的背景から、現代でも独立を求める運動が起こっています。

    では、ヨーロッパでナショナリズムが目立ってきた19世紀のスコットランドはどうだったのか、ということを考える勉強をしています。

    ── 高校の時の世界史よりは、地域を絞って具体的に勉強するイメージですかね。

    そうですね。また、高校のときに習った世界史より詳しく、違った視点で学ぶこともできます。

    私が高校で習ったイギリス史は、実はかなりイングランド中心の傾向が強いものでした。ピューリタン革命や名誉革命などもその例で、アイルランドやスコットランドからの視点も含めると、また異なる見方ができます。


    社会で役立つ歴史理解

    ── I さんが学んでいることは、社会でどのように役立てられていると思いますか?

    日本人が世界のニュースを見るときに歴史理解は必要ですし、他者理解や国際交流の面でも重要です。

    日本史だけでなく世界史も勉強することで、自分たちのいる位置をより相対化して理解できるようになると思います。

    ── 世界史の理解を通して、自国の歴史との比較や国際情勢の背景を考えられるんですね。

    今の話とも関連しますが、日本人、外部の人の視点からスコットランドの歴史を勉強することには、どのような意味があると思いますか?

    当事者ではないからこそ、イデオロギー的な影響を受けにくいことが考えられます。

    たとえば私は、スコットランドが連合王国から独立すべきかどうかに関して、強い意見を持っているわけではありません。完全にとは言えませんが、多少客観視できるという点では、日本人が西洋史研究をすることには意味があると思います。


    当時の世界を垣間見る。西洋史学の魅力

    ── 現在学んでいることについて、どこに魅力を感じていますか?

    当時の世界を垣間見ているようなワクワク感が得られることです。

    その時代に書かれた日記や新聞などの史料を一次史料と言うのですが、研究で19世紀の史料を読むと、教科書よりもずっとリアルな情報が得られるんです。

    当時の新聞には、広告や訃報、結婚情報まで記載されていることもあるんですよ。

    また、研究の際は先行研究を勉強して、その上でオリジナルな観点を見つけるのですが、昔の学者が難しい事象を様々なフレームワークから多角的に議論しているので、先行研究を調べるだけでも面白いです。

    ── 当時の生活や、昔の学者の議論を見られるのは興味深いですね。少し脱線しますが、そもそも史料を集めるのが大変そうだと思いました。実際はどうですか?

    本当にその通りです。私が研究対象とするのは近代の英語の史料なので、比較的理解しやすいものではありますが、文献を手に入れて読み込むだけでもかなり大変です。

    修士・博士課程になると、より良い研究のために、実際にイギリスに足を運んで公文書館に行き、写真を撮って史料集めをする人もいますね。

    ── やはり、海外の史料を扱うからこその難しさがあるんですね。

    一方で、インターネット上で一次史料の公開が普及してきたのも事実です。近年では、OCR(光学文字認識)といって、手書きの文字や、新聞などの印刷された活字をデジタルのテキストに変換できる技術も登場しました。

    この技術のおかげで、一枚一枚史料をめくりながら探さなくてはいけなかったのが、キーワードを打ち込むだけですぐ検索できるようになりましたね。

    史料を手に入れやすく、探しやすくなったことで、日本における西洋史研究はこれから発展していくのではないかと思います。


    他の学問分野との関連

    ── 他の学問分野で、今学んでいることと関連性が高いと思うことはありますか?

    テーマにもよりますが、私のテーマでは、英文学が結構出てきます。

    文学の面からもスコットランドらしさを強調した作品が、19世紀のスコットランド・ナショナリズムにおいて出てきたからです。

    また、ナショナリズムの定義なども関わってくるので、社会学や政治思想といった、いわゆる歴史学とはちょっと離れたものとも関連しています。

    分野によっては経済学や経済史、統計を扱う人もいますし、歴史は哲学や宗教と被っている部分がたくさんありますね。

    ── ありがとうございます。高校の世界史でも文化史や経済史などを習うことを考えると、歴史と関連する学問が多いのも納得ですね。

    そうですね。高校の勉強との関連もあって、世界史や英語はもちろんですが、倫理なども関係すると思います。


    学びたいことを学ぶための進路選択

    ── 次に進路選択の話になります。高校時代に大学はどのように選びましたか?

    田舎の生まれなので、本が手に入れやすくて多様な人々が集まる都会への憧れがありました。その点、日本のトップと言われる東京大学では、今まで出会うことのなかった人々と知り合い、今までできなかった経験ができるのではと思い志望しました。

    ── さまざまな人との出会いを求めて、東大を志望したのですね。文科三類を選んだのには、どのような経緯があったのですか?

    当時は身内の影響で金融に関係する職業に興味があり、なんとなく文科二類への進学を考えていました。

    しかし、学問的な興味は世界史や外国文学に偏っていました。特に、アガサ・クリスティやシャーロック・ホームズ、ハリー・ポッターなど、イギリスを舞台にした本が好きでたくさん読んでいました。

    最終的には、大学は自分が学びたいことを学ぶ場所だと思い、文科三類に決めました。

    ── 就職等よりも自分の興味を優先して科類を選んだということですね。大学に入ってからはどのように学部、専修を選びましたか?

    文学と西洋史で迷ったのですが、読書は好きだけど文学研究は向いてないな、と授業を受ける中で感じていました。一方で、歴史には高校から一貫して興味があったので、西洋史を選びました。

    ── 大学院での専門はどのように決めましたか?

    もともとは就職活動をしていたんですが、4年に進級する頃に大学院進学を決めました。

    就職活動をする中で、面接で「大学で何を勉強しましたか?」と聞かれると、自分があまり深く何かを学べていないと気づいたんです。

    また、その頃に卒論のテーマを決めたのですが、そちらを研究する方に魅力を感じ、修士課程に進んで専門をしっかり勉強することにしました。

    ── 進学選択は前期で幅広く学べる分、後期過程は2年しかなくて専門を深く勉強できないと感じる人もいますよね。


    魅力的な先生方や先輩方

    ── 現在の専修に進学してよかったなと感じていることはありますか。 

    先生方や先輩方の人が良いという点ですね。 

    当然のことながら、日本でも有数の研究者である先生方から直接指導していただけることは非常に贅沢だなと日々感じています。さらに先生方は、人間的にも魅力的な方ばかりです。

    また、先輩方にも大変お世話になっています。学部の時には丁寧な卒論指導をしてくださいました。上と下の関係が強いわけではないんですが、研究室の先輩は後輩に対して面倒見がいいですね。


    卒業後の進路について

    ── 続いて、卒業後の進路についてお聞きしたいのですが、修士課程修了後の進路について教えていただけますか?

    現時点では、博士課程には進まずに就職をするつもりです。勉強したことと直結する仕事は少ないのですが、社会に出て働きたいという気持ちが強いです。

    ── ありがとうございます。それでは、西洋史を学んだ方々の主な進路について教えていただけますか?

    私の学科では大学院に進学せずに就職する人がマジョリティで、その就職先は、文学部の就職先の割合と変わらないと思います。

    修士を出て就職する人は、教員免許を持っている人は多い気がします。研究者以外だと学芸員とかですかね。

    ── ありがとうございます。I さんは、どのような業界を希望されていますか?

    今さまざまな業界で、非常に悩んでいます。学んだことと直結する業務ではなくても、研究の話ができる人のいる会社がいいかな、と思っています。


    高校生にメッセージ

    ── 記事を読んでいる高校生に一言お願いします。

    就職を考えて学部を選ぶのも重要な観点ではありますが、それ以上に「勉強したいこと」があるなら、大学でしか出来ない勉強を大切にしてほしいです。

    就職に有利だからと、自分の知的好奇心を抑えて他の学部に行くよりも、学びたい専門に進むのは決して後悔する選択ではないと思います。

    特に、高校生は学部を選ぶのが大変だと思いますが、ネットで調べれば、大学が主催する講座やシラバスを見ることができます。

    そういったものを見ながら、どんな学問があるのか情報収集をしつつ、自分を偽らず、学びたいことを見つけていくのが大事だと思います。


    いかがだったでしょうか? 西洋史学研究の面白さや奥深さが感じられ、東大の大学院のイメージも湧いてきたのではないでしょうか。

    次回は、社会心理学を学ぶ3年生Yさんへのインタビューです。お楽しみに!

  • 【東大生に聞いた】向き合うことで得られるもの【文学部国文学専修】

    【東大生に聞いた】向き合うことで得られるもの【文学部国文学専修】

    工学部編から始まった、各学部の東大生へのインタビュー企画。第2弾は文学部編です!

    「文学部」と聞くと、「日本や世界の文学を学ぶの?」と思われる方もいるのではないでしょうか。

    しかし、東大文学部には27もの専修課程があり、歴史学や社会学など、幅広い学問分野をカバーしています。
    今回はその中から、国文学、西洋史学、社会心理学を学ぶ方々にインタビューを行いました!

    第1回はこの方です!

    【プロフィール】※情報はインタビュー時のものです
    ・名前: Dさん
    ・学年: 3年
    ・学部・学科(専修): 文学部・日本語日本文学(国文学)専修
    ・出身: 愛知県・一宮高校


    国文学専修での学び

    ── 今専修で学んでいることの内容を教えてもらえますか?

    国文学専修では、文字通り「国文学」を研究しています。

    日本語で書かれた文献全てを研究対象として扱います。時代は『万葉集』から近現代の文学に至るまで、ジャンルは歌謡や歌舞伎、演劇、思想・宗教の言説などにまで及びます。

    ── 授業はどのような形式で行われるのですか?

    大まかに言えば、特殊講義演習に分かれています。

    特殊講義は、「特殊」とついていますが、一般的な講義と同じです。

    教員がある作品について解説したり、「文学史」といった何らかのテーマについて講義を行ったりします。教員の解説を聞きながら『源氏物語』を読む授業などがありますね。

    もう1つが演習で、大学では「ゼミ」と呼ばれるものです。

    国文学専修では、ある文学作品の担当部分について、辞書や先行研究を用いて言葉の意味や解釈などを調べ、自分なりに発表する、というものが多いです。

    また、演習の授業は、1学期につき1コマは受講する必要があります。
    文献を読み、調べ、自分の口で伝えるという過程を、国文学専修がいかに重視しているのかが分かるのではないでしょうか。


    「読む」のも一苦労? くずし字の奥深さ

    ── Dさんが個人的に勉強している・したいと思っていることについても教えてもらえますか?

    くずし字を読めるようになりたいなと思っています。
    (資料を見せながら)たとえば、これは江戸時代の商家の書状です。こういったものを読めるようになりたいです。

    ── 大学では、くずし字を扱う授業があるんですか?

    国文学専修の演習では、写本の画像データが与えられて、くずし字を読んでみようという授業もあります。

    また、日本史学専修の「古文書学」という授業では、江戸時代や明治時代の史料を使ってくずし字を勉強します。

    ── くずし字には専用の教科書などがあるのですか?

    くずし字の辞典やネットに公開されているデータベースで調べると、任意の字のくずし方の例を見ることができます。

    はじめは1文字ずつ読む作業ですが、慣れてくると一般的なくずし方や頻出の字がわかってきて、徐々に文章を読めるようになります。

    ── 研究者気分が味わえて楽しそうですね。くずし字は外国語の勉強と比べてどうでしょうか?

    発音やリスニングの必要がないので、外国語よりは簡単だと思います。また、書いたことがある字も多いので、筆で書いたときの省略を想像しながら読むと理解しやすいです。

    よく使われる文字は、省略・記号化されて、「ありえない」と思うような崩し方になっていることもしばしばあります。

    たとえば、江戸時代だと「候」という字が記号化されていることが多いです。


    時代を越えた作者との対話

    ── 今学んでいることが社会で今後どんなふうに役立つと思いますか?

    こんなことを言うと怒られそうですが、理系のように「この技術が……」というものはないので、目に見えて何かに役立つ、ということはないかも……?

    もちろん、有名な作品の新しい解釈が出てきたとなれば、教科書が変わるかもしれません。でも、大学3年生の実感としては、実社会に結びついているものはあまり多くないと思います。

    それでも、僕たちは研究をするときに、作者、登場人物、そこで構築されている世界、表現……いろいろありますが、それらに向き合っていくわけです。

    それがいわゆる「作者とのやりとり」や「対話」であって、それに真面目に取り組んできた人たちが、価値観や表現力などを手に入れると思うんですよね。

    ── 「対話」をしながら得られるスキルや価値観があって、それらが社会で役立っていく、ということは確かにありそうですね。


    多様な解釈を通じて広がる世界

    ── また個人的な話に戻るのですが、今学んでいることのどんな点に魅力を感じていますか?

    いろんな認識や見方、解釈が可能な点でしょうか。

    国文学は、作者が亡くなっていることも多いし、書き写しのものもあるので、書写のミスによって文が変わっていたり、そもそも統一的な成立なのかどうかすらわからないものも存在します。

    でもだからこそ、「こういう根拠があるから、こんな解釈ができるのではないか」や「他の文献でこういうものが出ているから、この言葉はこれと同じような使い方なのではないか」というふうに、研究者によって様々な見方ができます

    勉強すればするほど新しい見方を得ることができるし、自分でも新しい見方を示すことができるのが、国文学研究の面白さだと思います。

    ── 1つの文学に対しても複数の見方ができて、先行研究などで多様な見方を学ぶのが楽しいのですね。また、自分の見方を示せるというのは、文学研究に知見がどんどん付け足されていくといった感じでしょうか。ありがとうございます。


    国語学とも日本史とも。他の学問との結びつき

    ── 他の学問分野で、専修で学ぶ内容と関連性が高いものがあれば教えてください。

    大学の研究分野なら、国語学ですね。

    日本語を言語として研究する学問が国語学なのですが、中でも日本語の歴史的変遷に関する研究は、国文学を扱う人も注意すべき内容が多いと思います。

    たとえば、発音はこれまでずっと変化してきているんですよね。

    半濁音(パピプペポ)は最初からあったわけではなく、室町時代あたりから成立したと考えられています。このように、日本語は歴史の中で変化しているんです。

    和歌のような韻文を読むときは特に、「どう読まれていたか」なども理解できていれば、当時の人と近い考え方ができますよね。

    ── なるほど。他にはどうですか?

    もう1つ関係が深いなと思うのが日本史学ですね。

    その時代の背景、つまりどんな社会だったのかを知っておくと、国文学の作品を理解するのに役立ちます。

    大きな戦乱があれば、文学にもその影響は及びます。ものを書く人たちの価値観が変わるんです。

    今でも同じだと思いますが、時代が変わったり、大きな出来事が起こったりすると、価値観が変化し、書かれるものも変わってくるのではないでしょうか。

    だから、その時代に何があったのかがわかる程度の日本史の知識があると役に立ちます。

    ── 日本語そのものや歴史的背景を学ぶ国語学・日本史学は、国文学と関係が深いのですね。高校までの学習内容で、今の専修と関連性が高いものはありますか。

    もちろん、国語や日本史は関連性が高いです。

    また、くずし字では草書体が使われていることもあるので、近世以前であれば書道なども関係するのではないでしょうか。

    さらに、人々の考え方という点で言えば、倫理の思想史も多少は関係あるのかなと思います。

    ── 高校までだと書道や倫理の関連性も高そうということですね、ありがとうございます。


    国文学か日本史か

    ── 次に進路選択についてです。まず、高校時代は大学や科類をどうやって選びましたか?

    高校2年のとき、担任の先生に東大を受けるよう勧められたのがきっかけです。科類については、もともと日本史や国文学に興味があったので、文学部に行きやすい文科三類を選びました。

    ── もともと国文学に興味があったんですね。文学以外でも良いのですが、高校時代は他にどんな学問に興味がありましたか?

    古文漢文、日本史が好きでした。特に、辞書を引いたり文法を調べたりしながら古文を読むのが楽しくて。

    ── ある程度進路の方向性は決まっていたんですね。では、大学に入ってからどうやって学部、専修を決めましたか?

    文学部に行くことはすでに決めていました。専修は日本史か国文学かで最後まで迷いましたが、ゆるい空気感が気に入ったので国文学を選びました。

    前期課程で受けた『源氏物語』を解説する授業や、歌舞伎の表現を学ぶ授業が特に楽しくて、そういった題材を扱えるという点で国文学に傾いたのもあります。


    温かい雰囲気も魅力

    ── 前期課程では幅広い分野の授業が取れますが、前から文学系の授業を多く取っていたんですね。それでは、現在の専修を選択してよかったと思う点はありますか?

    雰囲気がとてもゆったりして優しいです。必修の授業も少ないので、理系に比べれば負担は多くありません。

    研究室の蔵書も多く、「蔵書あげます」という連絡をもらったこともあります。「貴重そうな本なのに!」と驚きました。

    ── 学科や専修の教授や同級生との繋がりはありますか?

    同学年が20人くらい、教員が5人くらいいます。同じ授業を履修している人、つまり興味が近い人と知り合いになることが多いです。

    4年になって卒論を書き始めると、担当教員との繋がりは強くなりますね。

    それなりに人数の多い専修ですが、教員や学生の距離は決して遠くないという印象です。


    大学院進学か、それとも就職か

    ── 次に大学卒業後の進路について聞いていきたいと思います。Dさんが大学卒業後考えている進路を教えていただけますか?

    大学院には進学せず、4年生で卒業して就職する予定です。

    国文学専修から大学院に進学するのは、毎年各時代で数人、20~30%程度です。

    ── 就職する人が多数派なんですね。主な就職先などはありますか?

    文学部全体だと、出版、メディア系が他学部よりは多いようです。しかし、官公庁や、商社、銀行、メーカーといった民間企業など、かなり様々な人がいます。

    ── 7、8割の人が就職するとのことですが、3年生から4年生にかけて就活と自分の研究を両立させるのは大変ですか?

    演習の発表準備をする時期などは、就活との兼ね合いが難しいこともありますね。

    3年生では授業をそれなりに多く取っていますが、4年生になると授業を減らして卒論を書くので、比較的時間に融通が利きそうです。

    そのせいか、はたまたそのゆったりした雰囲気のせいか、文学部は他学部に比べて3年生のうちから就活を始める人が少ない印象です。

    ── 文学部は進路が様々という話がありましたが、Dさん自身はどういった進路を考えていますか?

    僕は……ホワイトな職場に行きたいです(笑)。まだ具体的には決まっていませんが、インフラ系には興味がありますね。


    高校生にメッセージ

    国文学に限らずですが、高校までの勉強と大学の学問は結構違います。

    国文学では高校のいわゆる「古文」を扱うこともありますが、現代語訳や文法の勉強にとどまらず、もっと幅広い視点で研究できます。

    国語が苦手で点数が取れないという人も、国語ができないからという理由で国文学の選択肢を捨てないでほしいです。
    国語を勉強していて楽しいという人も、大学の学問は今やっているものとは違うかもしれません。

    いろいろと調べる中で、自分で楽しいと思えるものを専攻にしてもらえたらと思います。


    いかがだったでしょうか? Dさんのお話から国文学の魅力や楽しさが感じられましたね!
    次回は文学部の大学院で西洋史を学んでいる I さんのインタビューです。お楽しみに!