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  • 【東大生に聞いた】好奇心のおもむくままに【大学院西洋史学研究室】

    【東大生に聞いた】好奇心のおもむくままに【大学院西洋史学研究室】

    東大生へのインタビュー企画文学部編、第2回に登場するのは、西洋史学を学ぶ I さんです!
    この企画で初めてとなる、東大の大学院に進学された方へのインタビューです。

    西洋史を含めた歴史学に興味のある人はもちろん、東大の大学院に少しでも興味がある人も必見です!

    【プロフィール】※情報はインタビュー時のものです
    ・名前: I さん
    ・学年:修士1年
    ・研究科・専攻:人文社会系研究科・欧米系文化研究専攻(西洋史学)
    ・出身:福島県・会津学鳳高校


    近代スコットランド史を勉強中

    ── 現在、 I さんはどのような勉強をされているのか教えてください。

    西洋史学研究室で、西洋史、特に近代スコットランド史を勉強しています。

    今学期は近代イギリス史やフランス史のゼミも受けていますし、今年から単位互換制度で早稲田大学と京都大学のゼミも取っています。

    ── 大学院生とはいえ、幅広く学んでいるという感じなんですね。京都大学のゼミも取れるというのは、オンラインだからですか?

    京都大学はオンラインで参加していますが、早稲田大学は対面で授業をやっているので、週に2回ほど早稲田大学に行っています。早稲田生みたいですね(笑)。

    ── 東大にはどれくらい行っているんですか?

    東大の授業は全てオンラインなのですが、図書館で作業することが多いので、本郷キャンパスの総合図書館には週に3回ほど行っています。

    ── 早稲田よりはちょっと多いくらいですかね(笑)。ありがとうございます。


    近代スコットランド史の勉強とは?

    ── 特に勉強しているのは近代スコットランド史だと思うのですが、具体的にどのような勉強をしているのか教えていただけますか。

    19世紀スコットランドのナショナリズムについて勉強しています。

    スコットランドは、現在はイギリスの一部ですが、18世紀までは独立した王国でした。そのような歴史的背景から、現代でも独立を求める運動が起こっています。

    では、ヨーロッパでナショナリズムが目立ってきた19世紀のスコットランドはどうだったのか、ということを考える勉強をしています。

    ── 高校の時の世界史よりは、地域を絞って具体的に勉強するイメージですかね。

    そうですね。また、高校のときに習った世界史より詳しく、違った視点で学ぶこともできます。

    私が高校で習ったイギリス史は、実はかなりイングランド中心の傾向が強いものでした。ピューリタン革命や名誉革命などもその例で、アイルランドやスコットランドからの視点も含めると、また異なる見方ができます。


    社会で役立つ歴史理解

    ── I さんが学んでいることは、社会でどのように役立てられていると思いますか?

    日本人が世界のニュースを見るときに歴史理解は必要ですし、他者理解や国際交流の面でも重要です。

    日本史だけでなく世界史も勉強することで、自分たちのいる位置をより相対化して理解できるようになると思います。

    ── 世界史の理解を通して、自国の歴史との比較や国際情勢の背景を考えられるんですね。

    今の話とも関連しますが、日本人、外部の人の視点からスコットランドの歴史を勉強することには、どのような意味があると思いますか?

    当事者ではないからこそ、イデオロギー的な影響を受けにくいことが考えられます。

    たとえば私は、スコットランドが連合王国から独立すべきかどうかに関して、強い意見を持っているわけではありません。完全にとは言えませんが、多少客観視できるという点では、日本人が西洋史研究をすることには意味があると思います。


    当時の世界を垣間見る。西洋史学の魅力

    ── 現在学んでいることについて、どこに魅力を感じていますか?

    当時の世界を垣間見ているようなワクワク感が得られることです。

    その時代に書かれた日記や新聞などの史料を一次史料と言うのですが、研究で19世紀の史料を読むと、教科書よりもずっとリアルな情報が得られるんです。

    当時の新聞には、広告や訃報、結婚情報まで記載されていることもあるんですよ。

    また、研究の際は先行研究を勉強して、その上でオリジナルな観点を見つけるのですが、昔の学者が難しい事象を様々なフレームワークから多角的に議論しているので、先行研究を調べるだけでも面白いです。

    ── 当時の生活や、昔の学者の議論を見られるのは興味深いですね。少し脱線しますが、そもそも史料を集めるのが大変そうだと思いました。実際はどうですか?

    本当にその通りです。私が研究対象とするのは近代の英語の史料なので、比較的理解しやすいものではありますが、文献を手に入れて読み込むだけでもかなり大変です。

    修士・博士課程になると、より良い研究のために、実際にイギリスに足を運んで公文書館に行き、写真を撮って史料集めをする人もいますね。

    ── やはり、海外の史料を扱うからこその難しさがあるんですね。

    一方で、インターネット上で一次史料の公開が普及してきたのも事実です。近年では、OCR(光学文字認識)といって、手書きの文字や、新聞などの印刷された活字をデジタルのテキストに変換できる技術も登場しました。

    この技術のおかげで、一枚一枚史料をめくりながら探さなくてはいけなかったのが、キーワードを打ち込むだけですぐ検索できるようになりましたね。

    史料を手に入れやすく、探しやすくなったことで、日本における西洋史研究はこれから発展していくのではないかと思います。


    他の学問分野との関連

    ── 他の学問分野で、今学んでいることと関連性が高いと思うことはありますか?

    テーマにもよりますが、私のテーマでは、英文学が結構出てきます。

    文学の面からもスコットランドらしさを強調した作品が、19世紀のスコットランド・ナショナリズムにおいて出てきたからです。

    また、ナショナリズムの定義なども関わってくるので、社会学や政治思想といった、いわゆる歴史学とはちょっと離れたものとも関連しています。

    分野によっては経済学や経済史、統計を扱う人もいますし、歴史は哲学や宗教と被っている部分がたくさんありますね。

    ── ありがとうございます。高校の世界史でも文化史や経済史などを習うことを考えると、歴史と関連する学問が多いのも納得ですね。

    そうですね。高校の勉強との関連もあって、世界史や英語はもちろんですが、倫理なども関係すると思います。


    学びたいことを学ぶための進路選択

    ── 次に進路選択の話になります。高校時代に大学はどのように選びましたか?

    田舎の生まれなので、本が手に入れやすくて多様な人々が集まる都会への憧れがありました。その点、日本のトップと言われる東京大学では、今まで出会うことのなかった人々と知り合い、今までできなかった経験ができるのではと思い志望しました。

    ── さまざまな人との出会いを求めて、東大を志望したのですね。文科三類を選んだのには、どのような経緯があったのですか?

    当時は身内の影響で金融に関係する職業に興味があり、なんとなく文科二類への進学を考えていました。

    しかし、学問的な興味は世界史や外国文学に偏っていました。特に、アガサ・クリスティやシャーロック・ホームズ、ハリー・ポッターなど、イギリスを舞台にした本が好きでたくさん読んでいました。

    最終的には、大学は自分が学びたいことを学ぶ場所だと思い、文科三類に決めました。

    ── 就職等よりも自分の興味を優先して科類を選んだということですね。大学に入ってからはどのように学部、専修を選びましたか?

    文学と西洋史で迷ったのですが、読書は好きだけど文学研究は向いてないな、と授業を受ける中で感じていました。一方で、歴史には高校から一貫して興味があったので、西洋史を選びました。

    ── 大学院での専門はどのように決めましたか?

    もともとは就職活動をしていたんですが、4年に進級する頃に大学院進学を決めました。

    就職活動をする中で、面接で「大学で何を勉強しましたか?」と聞かれると、自分があまり深く何かを学べていないと気づいたんです。

    また、その頃に卒論のテーマを決めたのですが、そちらを研究する方に魅力を感じ、修士課程に進んで専門をしっかり勉強することにしました。

    ── 進学選択は前期で幅広く学べる分、後期過程は2年しかなくて専門を深く勉強できないと感じる人もいますよね。


    魅力的な先生方や先輩方

    ── 現在の専修に進学してよかったなと感じていることはありますか。 

    先生方や先輩方の人が良いという点ですね。 

    当然のことながら、日本でも有数の研究者である先生方から直接指導していただけることは非常に贅沢だなと日々感じています。さらに先生方は、人間的にも魅力的な方ばかりです。

    また、先輩方にも大変お世話になっています。学部の時には丁寧な卒論指導をしてくださいました。上と下の関係が強いわけではないんですが、研究室の先輩は後輩に対して面倒見がいいですね。


    卒業後の進路について

    ── 続いて、卒業後の進路についてお聞きしたいのですが、修士課程修了後の進路について教えていただけますか?

    現時点では、博士課程には進まずに就職をするつもりです。勉強したことと直結する仕事は少ないのですが、社会に出て働きたいという気持ちが強いです。

    ── ありがとうございます。それでは、西洋史を学んだ方々の主な進路について教えていただけますか?

    私の学科では大学院に進学せずに就職する人がマジョリティで、その就職先は、文学部の就職先の割合と変わらないと思います。

    修士を出て就職する人は、教員免許を持っている人は多い気がします。研究者以外だと学芸員とかですかね。

    ── ありがとうございます。I さんは、どのような業界を希望されていますか?

    今さまざまな業界で、非常に悩んでいます。学んだことと直結する業務ではなくても、研究の話ができる人のいる会社がいいかな、と思っています。


    高校生にメッセージ

    ── 記事を読んでいる高校生に一言お願いします。

    就職を考えて学部を選ぶのも重要な観点ではありますが、それ以上に「勉強したいこと」があるなら、大学でしか出来ない勉強を大切にしてほしいです。

    就職に有利だからと、自分の知的好奇心を抑えて他の学部に行くよりも、学びたい専門に進むのは決して後悔する選択ではないと思います。

    特に、高校生は学部を選ぶのが大変だと思いますが、ネットで調べれば、大学が主催する講座やシラバスを見ることができます。

    そういったものを見ながら、どんな学問があるのか情報収集をしつつ、自分を偽らず、学びたいことを見つけていくのが大事だと思います。


    いかがだったでしょうか? 西洋史学研究の面白さや奥深さが感じられ、東大の大学院のイメージも湧いてきたのではないでしょうか。

    次回は、社会心理学を学ぶ3年生Yさんへのインタビューです。お楽しみに!