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  • 【合格体験記】工学部推薦入試

    【合格体験記】工学部推薦入試

    推薦体験記

    みなさんこんにちは。
    今回は、工学部推薦生(2020年度5期, 領域1)として受験体験記を書かせていただきます。
    少しでも推薦について知ってもらえたり、興味が湧いてくれたりしたら嬉しいです。


    1. 推薦入試という選択肢

    なぜ私が推薦入試という選択肢を考え始めたのか。一番最初の理由は至って単純で、東大に受かる可能性があるならチャンスは少しでも多い方がいいと思ったからです。その後きちんと仕組みや享受できるメリットを調べて、受験を本格的に考えるようになりました。(高3の夏頃から緩やかに推薦入試の準備を始めました。)

    具体的に私が惹かれたメリットは、
    1. 学部指定で入学できる
    2. 早期履修のしやすさ
    の2つです。

    通常、東大の入試は科類だけを決めて出願する方式で、後期過程(大学3年生以降)の進学学部は、成績も加味された上で希望に基づいて、後から決定されます。しかし、推薦生は進学選択には参加せず初めから学部が決定した状態で入学することができます。このメリットはまた後ほど述べたいと思います。

    もちろん、他の学生と同様に2年間は前期教養過程を過ごし、3年生から後期学部生になるという仕組みは変わりません。しかし、推薦生は前期教養過程に属して幅広い学びを受けつつ、希望すれば早くから後期過程の授業を受けることができるのです。元々前期教養過程に魅力を感じていたので、上記の2点は私にとっていいとこどりのメリットでした。

    条件に合うならば、推薦入試はとても魅力的な選択肢のひとつです。


    2. 向き合ったもの・考えたこと

    振り返ってみると、私にとっての推薦入試は「ただ大学に入るための入試」ではなかったように思います。準備期間は、ひたすらに自分と向き合って将来について悩み考える時間でもあり、だからこそ、結果がどうであれこの受験には意味があると思えるものでした。

    他の学部については詳しく知らないので言及しませんが、工学部では、1次審査で各種書類(志願理由書, 高校時代の活動報告書等)の提出、2次審査で約45分間の面接があります。私は学術系オリンピックへの出場経験がなかったため、研究活動や海外研修の成果を活動報告として提出しました。

    ここで難しかったことが、高校時代の活動と自分が将来やりたいこととの繋がりです。高校での研究は放射線関連の研究で、海外研修も多くはその内容に関連したものでしたが、私の興味分野はまちづくりや都市工学でした。自分の中できっかけや考えはあったものの、それを相手に伝わるように、軸を意識しながら自分の言葉にしなければいけなかったため、書類準備でも面接準備でも苦労しました。高校時代にやっていたことがそっくりそのまま将来に繋がる人は少ないと思うので、それよりもむしろ、経験を通して何を考えたり得たりしたのかということが大切だろうなと意識して進めました。

    きっとこの推薦入試を受けていなかったら、自分の高校時代の活動を深く振り返ることはなかったと思うし、将来もしくは大学でやりたいことにも真剣に向き合っていなかったと思います(勉強が忙しくなればなるほど、蔑ろにしてしまいますね) 。たくさんの先生方に協力していただいて、他者から見た自分の強みや評価を知ることができたのも良い経験だったと思います。今の私のために必要な経験でした。


    3. 面接当日

    まず形式的なことを紹介すると、工学部の二次審査は5人の教授対自分の面接(約45分間)です。志望する領域によっても変わってきますが、領域1を志望した私の場合は口頭試問等がなく、純粋に教授の方々との対話という感じでした。

    対話の中身としては、高校時代の話も今後の話も満遍なく聞かれたような印象で、自分が書類に書いたり面接の中で話したりした内容についてさらに深く掘り下げられた記憶があります。

    また、「あなたの理想を実現するためにはどのような技術が必要になると思うか, もしくは今の段階で考えている構想はあるか」など、かなり具体的な話を求められることが多かったと思います。面接練習で用意したような質問は殆どありませんでしたが、その場で思考をまとめて自分の言葉にするという経験として、練習は役立ったのではないかと思っています。

    正直、面接を受ける前までは45分ってなんて長いんだろうと思っていました。その他にも、圧迫面接だったら嫌だなとか自分の専門性の脆弱さを突かれたらどうしようとか、本当にいろいろな不安がありました。実際はそこまで心配することはなかったというのが結論です。時間に関しては、教授が5人もいらっしゃるので、それぞれの方から質問を受けていたらいつの間にか時間が過ぎているという感じでした。内容に関しては、面接というよりは対話です。これは自分が受験準備を進めている時にも同じようなことを言っている先輩がいらっしゃって、当時はなんのことか実感がわかなかったのですが、実際受けてみてすごく納得のいく表現だなと感じました。

    また、その道のプロである教授を5人も相手にしてお話ができるというのはある意味貴重な経験だったと思います。自分にはなかった思考の切り口から質問を投げかけられることもあり、全てに満足いく回答ができた訳ではありませんが、対話自体は想像よりも楽しかったです。(緊張はもちろんしていたので、面接中の自分の言動はそこまではっきり覚えていませんが)


    4. 入学後について

    メリットとして、1.学部指定で入学できる, 2.早期履修のしやすさ の2つを挙げましたが、これらについてもう少し触れておこうと思います。まず、学部指定で入学できるということですが、これは入学後の履修の自由度に影響があると感じています。一般入学生が乗り越えなければならない進学選択を経る必要がないため、そこまで点数を気にせず、興味に応じた履修が可能です(東大生の中でも勉強ができる人にとってはあまり関係ないかもしれませんね……)。

    例えば、私は世界史にも美術知識にも昏いですが、内容が面白そうだった、かつ美術観賞が好きという単純な理由で美術史の授業をとりました。受講生は文系の学生が多いですが、今までになかった分野の学びを得ることができてとても楽しいです。加えて、早期履修も可能なので、1,2年生のうちに工学部の授業をとって後期過程分の単位を得ることができます。私は、まだ活用できていないのでこれから工学部の授業を履修していく予定で、楽しみにしています 。他にも、アドバイザー教員として何人かに1人先生がついてくださるので、進路や履修の相談をしやすいというのもメリットとしてあるかもしれません。


    5. 推薦を考えている方へ

    ここまで書いてきたように、私は推薦入試を受けてよかったなと思っています。別に学術系オリンピックに出ていなくても、スーパー高校生じゃなくてもいいんです。打ち込んできたものや興味があるものに対して、考えや熱意を自分の言葉で伝えられることが強みになる、そんな入試方式だと思います。

    推薦に全力を注いで勉強を二の次にしてしまうのは良くありませんが、あくまでも選択肢の1つ・チャンスの1つとして挑戦する意義はあるのではないでしょうか。FairWindにも推薦生が何人か所属しているので、受験準備で疑問に思うことや不安に思うことがあればぜひ質問/相談してみてくださいね。応援しています。

  • 【合格体験記】理学部物理学科推薦入試

    【合格体験記】理学部物理学科推薦入試

    おことわり

    2019年度の推薦入試を受験したので入試の情報は現在と異なる場合があるかもしれません。
    また理学部物理学科での受験でした。他学科とはとくに面接の様子など異なる場合がありえます、以上を踏まえて読んでいただけると幸いです


    イントロダクション

    東大の推薦入試には早い段階で興味があり、そのための実績作りという意味もあって競技科学(数学オリンピックなどの通称)には何度か参加しました。運良く予選を突破し本選に出場する機会を得ましたが、その時に感じたことなどが地方出身者として皆さんの参考になるかもしれないと思い、書かせていただきます。

    本選では全国から出場者が集まるわけですが、競技科学の性質もあって、首都圏の進学校生がマジョリティを占めている印象があります。大学入学後にいろいろ見聞きするうちに、地方では進学校ですらそういったコンテストがあることを知らない人が多いということを感じさせられます。

    僕自身もコンテスト系の情報は自分で手に入れていきましたが、研究活動で実績を作ろうという頭が全くありませんでした。周囲に研究活動をする雰囲気もなく、全国規模の大きな発表の場があることなど知らず自力でなかなか形にできる自信がなかったからです。きちんと知ることが出来ていれば、コンテストよりは研究活動で高校生活を送りたかったと今になって後悔しています。

    貪欲に情報を集める努力が足りなかったという自分の反省もありますが、おそらく最初のとっかかりは何気なく目にしたポスターだったりと思います。その探してもないのにふと目につくポスター的な存在がどれだけ周りにあるかは、確実なことは言えませんが地方と首都圏では少し差がある気がしています

    このFairWindという団体では主に大学受験における地方高校生のディスアドバンテージに対して後押しをしています。ここからは主観が入りますが、推薦生風(?)の学び、すなわち理系を例にとれば競技科学や研究活動といった学びに関しても地方の高校生は不利であると思います。それは情報が手に入らない、という点や経験者が周りにいないので身近に感じられない、そもそも参加する雰囲気や土壌が育ちにくいという点で難しさがあるように思います。

    どうしても自力で情報をもぎ取ってくる努力や人脈を作る努力、あるいはSSHやSGHなど与えられた環境から得られる物を最大限に生かす努力が必要だと思います。僕自身もそういった視点から地方高校生を後押しできればと思っています。推薦入試を考えている皆さんもそうでない皆さんも頑張ってください。


    2次試験

    受験生1人に対し、試験官が大体9人の面接でした。ただし、そのうち喋ったのは自分の受験する学科に関係する人のみらしく、僕の場合司会の先生と物理学科の先生2人でした。他の6人はずっと見てました。せっかく同席されてるなら雑談でもして和みたかった。

    試験会場にはホワイトボードがあってそれを使って答えてもよいとされています。物理でも数式を解かせたりすることを想定して臨みましたが、実際には口頭で答えられる質問が多く、ボードは補助的に使うことを想定していたように思います。必死に書いて答えようとしすぎて調子が狂いました。

    まずは提出書類の内容に絡んで軽い質問、続いて学科専用の問題を解かされる、という形です。書類には物理以外にも生徒会のことなど書いたのですが一切触れられませんでした。他学部だと関係ないことも聞いてくれるみたいですが、理学部は理科のことしか質問されないようです。裏話で聞いたところによると時間内で解き終わらない問題を予備含めて用意しているそうです。また、答えに詰まると助け舟も出してくれるので完璧に解けずとも自分の得意な問題で精一杯アピールすればいいと思います。

    今になって思うと聞かれた質問は、普通に高校レベルではなかった気がします。競技科学をするなら基礎みたいな問題ではありましたが。


    理学部

    理学部の推薦入試はかなり成績重視といった雰囲気を受けます。理系だと大きく科学コンテスト系研究活動系(もちろんその両方も)の実績に分かれると思いますが、理学部の場合コンテスト系の推薦生が多い印象を受けます。

    個人的に推薦生の多様性がすごく好きなのですが、理学部に限って言えば有名進学校出身者が多い印象です。そもそもコンテストの世界大会出場者が何人かいます。他の競技科学での世界大会出場者も輩出している高校から来る受験生もいますが、校内選考を突破したと思うとこわいですね。とはいえ世界大会とまではいかずとも、コンテスト成績関連のそこそこの実力(国内大会本選での好成績とか本選+研究活動でも活躍とか程度?)があればほぼ確実に受かるといった感じでしょうか。他学部と理学部で出願を迷っている際には参考にしてください。勉強っぽい推薦入試が得意なら理学部をお勧めします。

    ただし実力が必要条件といったわけでもなく、研究活動もしっかり評価されているので、コンテスト上位者を横目に自分の研究してきたことをコアにアピールしていく作戦もありです。用意された問題は解けなくても、志望理由書にかいていれば研究についてはかならず聞かれるはずなのでそこで存分にアピールすればとってくれそうな気がします(多分)。


    コンテスト、研究活動

    当然のことながら推薦入試で受かるためにはそれなりの実績が必要です。地方に住んでいて一番辛いのは実績になるコンテスト、研究などの情報が乏しいことです。実際競技科学の大会は関東、関西の進学校の出場者でいっぱいです。東大に入学した後、そういったコンテストがあるのさえ知らなかったという声もよく聞かれます。

    とはいえ多くの推薦生が、推薦入試のために実績を作るというよりも、自分の興味のあるものをとことん詰めて行った結果推薦入試で戦える実績が出来た、という形が多いのでは無いでしょうか。まずは学校での勉強に止まらない広い学びを求めること、そしてそうした学びができる場、自分の興味を突き詰められる場をアンテナを高くはって求めること、こういった努力が入試に合格するだけでなく、大学入学以降にも生かせる強みになると思います。


    推薦入試と一般入試

    推薦入試だけではなく、多くの皆さんが一般入試を目指すかと思います。推薦入試の準備と同時に共通テストや一般入試の勉強もしなければならないというのは普通の受験生に比べると負担が大きいです。あまり具体的なアドバイスはできませんが、共倒れしないようにいかにバランスを取るかが重要なので、そこは先生にサポートをもらうことを念頭におくと良いでしょう。

    合格体験記的なことを言うと、推薦の2次が終わったらセンターや一般に専念しようと計画しており、実際直後にすぐ切替は出来ました。ただ合格発表の2、3日前は思ったより異様な興奮や不安でいっぱいになり、勉強どころではありませんでした。もし推薦で落ちていれば立ち直れずに受かるところにも受かれない状態だったかもしれません。精神状態をコントロールする難しさを痛感した数日間でした。


    推薦入試の魅力

    そもそも僕は受験勉強に逆張りした結果競技科学に手を出し、その感じのまま推薦入試での合格に魅力を感じていました。ある意味推薦で入ることに自分らしさを求めたのかもしれません。もちろんそれだけではなく、推薦入学で得られるメリットを生かして研究者になるという目標を少しでも引き寄せたいという思いもありました。実際に合格したあとは、アドバイザー教員に積極的に相談して研究室見学を3回ほどさせてもらったり、早期履修で授業を先取りし刺激をもらったりという利点を予定通り享受しました。

    一方で思わぬ副産物として、人脈が出来たことが挙げられます。他の推薦同期や先輩後輩と交流する機会がありますが、なんといっても一人一人とがっていていくらでも話を聞ける面白さがあります。バックグラウンドも出身地もバラバラで、おそらくそれが推薦入試で念頭に置かれている多様性という言葉で表されるのだと思いますが、そういった言葉をわざわざ使わなくても、ごちゃごちゃいろんな人が混じり合っている様子のワクワク感は今では推薦生として入学したことの一番の魅力だと思っています。

    そしてこれはメリットかつデメリットでもあるのですが、教養学部で勉強するとき、“逃げ” の理由ができてしまいます

    自分の弱さを暴露することになるので恥ずかしいですが試験勉強をしていて、思わず内定しているから単位さえ取れてしまえばいいや、という “逃げ” の気持ちが出てきます。同級生は進振りのために必死に勉強している横で内心ふわふわしていました。

    あまりにも進振りに翻弄されてわけもわからず勉強するのもそれはそれでどうかと思いますが、推薦だから適当になるのもまた問題ですね。むしろ推薦生なら “翻弄されない” だけで“サボっていい”わけではないので、結局そこは自分次第だと言えるかもしれません。

    ただこれはメリットと捉えることもできて、最悪単位さえ取ればいいので、いろいろなことに挑戦できるチャンスでもあります。必修の授業のいくつかは独学でなんとかなりそう、と思って理学部の授業にもぐってみたり、3年生以降は物理で忙しくなるだろうから、バイトを楽しむ最後のチャンスってことで週末は飲食店で調理バイトしたりと他の東大生があまりしていないかもしれない体験にも挑戦できたのは個人的には満足できた部分です。


    まとめ

    きっと個人差はあるとは思いますが、推薦入試に挑戦する価値は計り知れないと思います。そしていわゆる受験勉強の枠組みを外れたフィールドでの学びにも積極的に参加することを僕からは大いにおすすめしたいと思うところです。ぜひ柔軟な視点で様々な世界を見てみてほしいと願っています。高校生活をたのしんでください。

  • 【浪人を経て東大へ】浪人時代の体験記

    【浪人を経て東大へ】浪人時代の体験記

    はじめに

    あなたは「浪人」ということに対してどのようなイメージを持っていますか? 一般的には現役合格について語られることが多いかもしれません。しかし、浪人だからこそ得られる経験もあります。そこでこの記事では、私が浪人を経験して東大に合格するまでの道のりを紹介しながら、浪人期に考えていたことを正直に綴ろうと思います。手本になれない部分もたくさんありますが、一つの浪人体験記として参考になれば幸いです。


    現役での大学受験を終えて

    初めての大学受験が明けた春先。合格者一覧の中に自分の番号はありませんでした。しかし、不合格を突きつけられた私は、正直涙も出ませんでした。自分の弱さなどずっと感じていたからです。十分な努力ができず、やるべきことをかなり残したまま受験に臨んだことに後悔がありました。本番も得意だった数学で失敗し、他の教科でもうまくいかず。不合格は当然の結果でもありました。そして、現役の頃はその弱さから、「このまま合格して大学でうまくやっていけるのだろうか」「まだやり残したことはある」といった思いがあり、合格が本当に良いものなのか、葛藤すら抱えていたのです。

    そして直面した不合格。だったらもっと自分に磨きをかけるため「もう一度チャンスをくれ」と。その思いを胸に、浪人への覚悟はいち早く決めました。


    再挑戦の第一歩

    浪人生活を始めるとき、多くの人が予備校などの所属先を考えます。私も相当悩みました。百聞は一見にしかずということで、実際東京に赴いて駿台の体験授業を受けましたが、それでもなお地元に残るか東京で下宿するかで頭を悩ませ続け、行き詰まった私はここで初めて泣いてしまったのを憶えています。やはり受験とは辛さも伴うもの。それまでは実感のなかった「もう一年」という大きな選択を前にして、一度は屈してしまいました。

    最終的には、家族や先生に相談しながら、長期戦を乗り越える上で自分の過ごしやすい方として、地元に残って新たな生活を始めることに決めました。このとき母校の先生がかけてくれた言葉を今でも憶えています。

    大事なのはどこで勉強するかよりもどう勉強するかだ、と。

    これは再スタートの覚悟を決める上で印象的な言葉でした。今でも思うことですが、何事においても主体性が鍵を握っています。特に受験において誰かに依存していては非生産的な結果しか生まれません。確かに勉強をする環境も非常に大事ですが、受験は自分の工夫次第で大きく変えられるということを、今この記事を読んでくれているあなたにも肝に銘じていただきたいと思っています。


    自分と向き合う2度目の受験勉強

    3月下旬、心機一転として地元の新たな塾に身を置き、もう一度合格に向けて進み始めました。しかし、ふりだしに戻ったわけではありません。浪人の強みは大きく3つあります。これまでの学力の積み上げが1年分大きいこと、現役で一度失敗を経験していること、そして失敗の原因となった弱点を補完するための時間が存分に与えられていること。これらの強みを活かせば、現役生よりも不利であることは決してないはずです。

    しかし、浪人はそんなに甘くはありません。学力の積み上げがあると言っても、勉強の方向性がずれていては伸びが悪く現役生にあっという間に追い抜かされてしまうし、時間も適切に使わなければあっという間に過ぎていきます。浪人生が学力的にリードしているのは当然なので、もはや模試の判定にも安心できない世界でした。現役時にA判定を出していたので、浪人してからの記述模試ではA判定から下がれないと思っていました。そんな浪人期は、未習分野もなく生活スタイルも違う点で、現役の時とは全く違う一年になりました。

    ここで、浪人期に行っていた勉強を記そうと思います。自習ベースの予備校だったのですが、その際に添削や映像授業を頻繁に利用していました。自分の間違い方の癖や答案における論理の不備などを指摘してもらえる添削は大切な武器になります。私は、主に過去問の添削を予備校の先生方にお願いし、浪人期は毎週取り組んでいました。加えて、英語は英作文の添削を秋以降集中的に受けていました。その他にも現役時から使っていたZ会も利用したりと、独りよがりの勉強にならないような工夫を心がけていました。また、映像授業も、自学自習だけでは身につかない考え方をプロから学べる点で強力でした。地方にいながらトップレベルの授業を受けられるのは現代の科学技術の恩恵ではないでしょうか。自分と向き合った勉強を大事にする一方で、プロからフィードバックや新たな知見を得ることは、長い受験勉強をする上でも安心材料となります。

    ところで、時間を適切に使わなければあっという間に過ぎていくと書きましたが、私自身気の緩みはたくさんありました。予備校から帰った後、息抜きと称して無駄な時間を過ごしてしまったことは受験時代の後悔です。確かに、最適なペースで進み続けるのはとても難しく、だらけてしまうこともありますが、一生懸命努力をして臨んだ受験はきっと輝かしい思い出になります。未練のない努力をしてほしいということを、受験を終えた身として伝えさせてください。


    迎えたリベンジの冬

    私は長丁場の受験で勉強の方向性を見失わないように、長期的なスケジュールと、そこから割り出される日々のスケジュールを立てることを大切にしていました。しかし、一年間スケジューリングを行っていたものの、冬になっても完成には程遠く、課題を残したままセンター試験はやってきました。順風満帆に受験が進むとは限りません。ここまでくると、重視すべきは積み上げた学力よりも本番でいかに力を発揮できるかです。私は受験に対する不安や緊張はあまり感じないタイプだったのですが、一発勝負の試験で体調不良でダウンするのはなんとしても避けたい思いがあり、そういう意味での緊張を抱えて臨みました。これも母校の先生から頂いた言葉なのですが、私は、過度に緊張しないように「槍が降っても気にしない」精神を大事にしていました。センター試験の受験会場は自宅からだいぶ離れたところにあり慣れない場所でしたが、多少の緊張があっても緊張している自分を受け止めて落ち着いて受けきることができ、一つ大きな安心を得ることができました。

    最後のセンター試験では、現役時より点数を伸ばし、東大の足切りも越えたものの、9割には届きませんでした。しかし自分は東大に合格する一心で受験をしてきたので、引き下がる意味もありませんでした。合格者のセンター平均点は9割と言われますが、実際は9割に届かなかった合格者も割といる印象です。根拠のない自信は盲進になりかねませんが、これまで培った自分の能力を信じて、怯まず強気でいることは私にとっての合格の秘訣でした。

    センター試験が終われば東大への最後の道が始まります。去年と違ってここで勝負は決着。出した結果が次の進路。なんとしても勝たねばという気持ちは去年より強くなりました。現役の時よりもセンター利用を多く取り入れたり私大受験数を増やしたりと、浪人時は現役時より詰まったスケジュールでした。その分効率よく勉強すべきでしたが、要領の悪かった私は課題を計画通りに進められませんでした。やり残した勉強を仕上げるのが当初の目標だったのに、センター前と同様この時期でもやり残したことはたくさんあって、一年を後悔することもありました。でも腹を括らなければなりません。私は一年間、予備校で毎日現状報告の日記を書いていたのですが、東大受験のために上京する直前の日、覚悟をノートに宣言しました。

    これまでに解いた問題を手にとって振り返ってみて、積み重ねてきたことの多さに気づきました。何もかもを完璧にやってきたわけではなく、できずに終わることもたくさんあります。でも、それもこの一年で自分がしてきた選択なので、自分自身で可能性を潰すことなく、最後は合格という“正解”を描けるようにしようと思います。

    合格した今振り返ってみると、この言葉を記して良かったなと思っています。これまでの受験勉強の結晶として、最後に自信を繋いでくれた言葉でした。完璧な準備をして受験に臨める人はいません。そのため、できなかったことに目を向けて萎縮したり不安を感じるのではなく、これまでの自分の道のりを肯定的に認めてあげることが大切です。受験勉強をする上で周りの人に頼ることも時には必要ですが、本番で受験をするのは自分自身なので、自分なりの覚悟を持つことがとても大切なのではないでしょうか。

    ここで、私が出願した併願校について少しお話しします。センター利用は、取りやすい理科大や明治大に加え、早稲田にも出願しました。結果として早稲田以外のセンター利用に合格しましたが、これらは東大受験前に合格が決まるので、取っておけば安心材料になるはずです。一般受験は早慶と明治に出願しましたが、センター利用の合格が濃厚だったこと、移動の負担もあることを踏まえて早慶の受験に絞りました。本命の受験に支障が出ないように併願校の受け過ぎには注意ですが、やはり本命の前に併願校を受験しておくのは良い練習にもなります。

    東大入試本番。この時期はちょうど国内にコロナウイルスが現れ始めた頃なので、体調にはより一層の注意を払っていました。ただでさえ特別な場で、通常とは違った空気感がありましたが、試験も通常通りに運ぶわけではありませんでした。国語は時間が間に合わず、現役時と同じ過ちはしないと一年間注意し続けてきた数学で二の舞を踏み、理科も序盤から詰まり、英語でも挽回できるほどではありませんでした。1日目の夜は、澄ました顔をして実は不安を募らせていた気がします。2日目最後の英語でも、想定外に周りがペンを走らせる音が気になってしまいました。焦って問題に手がつかなくなりましたが、私は、その時取り組んでいた大問から一旦離れ、これまでにない解き順に舵を切って状況をたて直しました。試験ではこれまで通りの平常心で臨む一方で、臨機応変さも大切です。本番でのトラブルは即座に対応できるようできるだけ想定しておいた方が良いので、事前に対策を考えたり調べておくと安心ではないでしょうか。

    色々ありましたが、かくして2度目の3月10日、東京大学への合格を果たしました。もしかしたら失敗していたかもしれないと思うと、改めて合格まで走り抜けられたことに感謝が溢れる一年でした。振り返ってみると、浪人の一年は長いようで意外と短く、自分にとっては一瞬でした。浪人に限らず今受験勉強を頑張っている方には、辛いことも乗り越えて、「今、ここ」を大切に合格への道を歩んでほしいと思っています。


    浪人経験から得たこと

    ここでは浪人経験から得たことを大きく二つに分けて示したいと思います。

    • 途中見出しにも掲げたように、自分と向き合うことは勉強に限らず大切です。受験勉強は、簡単に言えば「分からない」を「分かる」に、そして「分かる」を「解ける」に変えていくものです。自分がこのうちのどこに位置するのかを把握することは、やるべき勉強を決める上での基盤となります。例えば三角関数自体がよく分かっていなければ基本からやり直すことになり、三角関数の基本や公式の意味が分かっているもののいざという場面で運用できないのなら問題集で練習する、といったように立ち位置によって課題は違います。その位置を把握するための手段として有用なのが模試や添削です。実践的な場で自分が出した解答や第三者のフィードバックをもとに、自分が見えていなかった自分まで見つけ出し、成長へとつなげていってください。
    • よく「浪人生は伸びない」と言われますが、決してそんなことはありません。そのように言われるのは、実際に勉強量を増やしても実力が伸びないケースが多いからです。しかし浪人の一年間で大きく成績を伸ばす人もおり、私自身現役時は38点足りませんでしたが、浪人をして合格最低点を16点上回ることができました。点数は学力の本質ではないので証拠とするのもおこがましいですが、ここで言いたいのは自分次第でいくらでも成績を伸ばすことが可能だということです。成績を伸ばす具体的な方法は人それぞれなので、ここで明確な答えを呈示することはできませんが、迷った時には先達の様々な意見を参考にして自分なりの勉強を確立すると良いのではないでしょうか。

    おわりに

    ここまで読んでいただきありがとうございました。私は一年浪人して東大に合格することができましたが、理論を積み重ねるばかりで行動力に欠けた人間でした。正直、もう一度同じ道を経て受験をしても合格する保証はないですし、もっと頑張ればよかったという後悔もあります。だからあくまで参考程度に留めてもらえると幸いです。むしろ大事なのは自分の生き方です。受験勉強、特に浪人となると辛いこともありますが、それを乗り越えた先には今よりももっと素晴らしい自分が咲くはずです。共通テストの導入や指導要領の改訂、そしてコロナ禍という新たな局面での受験が控えていますが、その状況で今できること、やるべきことを見つけて受験勉強に励んでほしいと思っています。

    応援しています。