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  • 【東大生に聞く】志望校・併願校の選び方【大学受験】

    【東大生に聞く】志望校・併願校の選び方【大学受験】

    はじめに

    突然ですが、この記事を読んでいる皆さんの中に、「志望校が決まらない……」「第一志望は決まっているけれど、併願校はどうしよう……」と悩んでいる人はいませんか?

    では、どうして志望校や併願校が決まらないのでしょうか。

    その要因の中には、「知っている情報が少なくて決められない」「そもそもどんな観点で決めればいいのかわからない」というものもあるのではないでしょうか。

    この記事では、まず志望校の選び方についてどんな観点があるか、筆者が受験生の時の体験をまとめます。

    次に東大生の併願校について、現役東大生であるFairWindメンバーを対象としたアンケートをもとに紹介します。

    この記事で紹介する内容は多くが個人の考えで、必ずしも「正しい」というわけではありません。

    大切なのは自分の行きたいところを選択することです。

    そのことを頭の片隅におきつつ読んでいただければ幸いです。

    志望校の選び方

    それでは、まずは志望校の選び方について見てみましょう。

    自分の興味や関心にあった選択をする

    結局これか、と思った人もいるのではないでしょうか。

    でも、これが一番大事と言っても過言ではないはずです。

    学びたいことや将来なりたい職業を考え、その分野の研究が一番進んでいる大学はどこか、その職業に就くために必要な資格をとるためにはどの大学に行けば良いか、と考えると志望校が見つかるかもしれません。

    同じ大学・同じ学部とはいえ、やっていることは全然違うということもあります。

    たとえば、同じ東京大学の教養学部でも、言語とコンピュータ・データ処理との関係について研究しているコースもあれば、また別のコースでは国際政治・国際法・国際経済を学んでいるコースもあります。

    どこに進学すれば自分の興味や関心にあったことを学べるのか、きちんと調べてみると良いでしょう。

    進学支援サイトや各大学のホームページを参考にしてみましょう。

    それでも、高校生の段階で完全に勉強する分野を決めてしまうことはためらわれる、という人もいるのではないでしょうか。

    そんな人には、大学に入って様々なことを勉強してみてから進学先を考えるという選択肢もある、ということを紹介したいと思います。

    たとえば東京大学では、進学選択という制度があります。

    入学時には進学する学部・学科が決まっておらず、1年以上の間さまざまなことを学んだのちに学部・学科を選ぶことができます。

    いずれにせよ、自分自身の将来の姿を、一番すぐに訪れる大学への進学を切り口に考えはじめてみると良いのではないでしょうか。

    大学の雰囲気を知る

    こちらもよく言われることですが、大学にはそれぞれ異なった「雰囲気」があります。

    それぞれの大学の雰囲気を知り、自分に合っていると感じた大学を選ぶことも重要ではないでしょうか。

    大学の雰囲気を知るための方法をいくつか紹介します。

    まず、オープンキャンパスに参加してみましょう。

    筆者自身はいわゆる「コロナ禍」の影響を受け、対面ではなくオンライン開催のオープンキャンパスに参加しました。

    しかし、実際に大学のキャンパスを訪れてみると植栽や各建築物のデザイン、あるいは行き交う人々の話し合う様子などから様々なことを感じられるのではないかと考えています。

    現在では対面でオープンキャンパスを実施する大学も増えているので、機会があれば、積極的に参加してみると良いでしょう。

    なお、東京大学のオープンキャンパスは現在でもオンライン開催ですが、オンラインであっても、どのような先生や学生がいるのかを知る機会になると思います。

    次に、大学のパンフレットを読んでみましょう。

    パンフレットには大学が受験生に向けて伝えたいことが書いてあります。

    いいことしか書いていない、という面もあると思いますが、各大学が力を入れている分野などを比較する良い手段になると思います。

    少しでも進学を考えている大学のパンフレットは読んでみると良いのではないでしょうか。

    ちなみに筆者は北海道大学、東北大学、東京工業大学(現 東京科学大学)のパンフレットを見比べていました。

    いずれも進学を考えていたのですが、その中で各大学を比較するのに役立ったと感じています。

    特に、入学した後の制度や仕組みには大学ごとに差があり、そのことを認識することができました。

    また、自分の興味に近い研究をしているのはどの大学か、などやや抽象的ではあったものの、大学や学部を選ぶ参考になりました。

    最後に、先輩の体験談などを聞いてみましょう。

    もし周りに自分が進学を考えている大学に進学した先輩やその人を知っている先生がいれば、話を聞いてみると良いと思います。

    その大学に実際に在籍している人の話を聞く機会は少ないかもしれませんが、その大学の雰囲気をよく反映していると思うので、周囲の環境を最大限活用してみると良いのではないでしょうか。

    もし周りにそういう人がいない、という場合も経験談などを調べてみると良いと思います。

    東京大学に関しては、私たちFairWindの記事や質問対応も活用してみてください。

    以上、様々な方法を紹介しましたが、どんな方法でもいいので自分から知ろうとしてみてほしいと思います。

    自分から知ろうとしてみれば、これまで以上に様々な情報が得られるはずです。

    いろいろな人の協力を得る

    「どこに」「どんな理由で」進学したいかを自分の中である程度はっきりさせ、周りの人たちに説明して理解や協力を得ましょう

    大学受験にはさまざまな不安がつきものだと思います。

    不安に思った時に、なんでも相談できる相手や助けてくれる人がいると、乗り越えやすいと思います。

    実際に私も両親に相談したことがあり、不安がなくならないけれど少し小さくなった、という経験をしました。

    だからといって周りの意見だけに流されるのではなく、最後は自分で決めた、という実感を持つとその後のモチベーションにつながると思うので、最終的には自分で決めることも大切にしてください。

    過去問を見てみる

    志望校選びにおいて「過去問」が重視されることはあまりないのではないかと思います。

    しかし私は、過去問を見ることも重要だと思っています。

    入学試験の問題には、大学が求める学生像が反映されていることが多いです。

    たとえば東京大学では、アドミッション・ポリシーに「自らの興味・関心を生かして幅広く学び、その過程で見出されるに違いない諸問題を関連づける広い視野、あるいは自らの問題意識を掘り下げて追究するための深い洞察力を真剣に獲得しようとする人」を求めていることが書いてあります。

    それを受けて入学試験では、ある知識や公式などを覚えているだけでは問題が解けず、それらを組み合わせて解決することが求められています。

    そのため、過去問を解いてみることが大切です。

    また、問題形式などとの相性もあると思います。

    いくつかの大学の過去問を見比べてどんな違いがあるかを探してみたり、興味深いと感じる問題を見つけてみたりしましょう。

    受験生はもちろん、ある程度範囲が終わってきたら1・2年生でも一度は過去問を解いてみると良いと思います。

    併願校の選び方

    ここまでは、筆者の視点から志望校の選び方に焦点を当てて見てきました。

    それでは、併願校はどうでしょう。

    併願校はあってもなくても良いですが、どちらにしてもなぜその選択をするのか、ということが大事になると思います。

    ここからは東大生がどのように考えていたのか、現役東大生であるFairWindメンバー119人を対象に実施したアンケートをもとに紹介したいと思います。

    なお、設問ごとに回答者数が異なるため、合計値が一致しない場合がありますが、ご了承ください。

    そもそも併願校に出願したのか

    FairWindメンバー119人が回答したアンケート(2025年実施)によると、

    • 併願校に出願した:78.2%(93/119)
    • 併願校に出願しなかった:21.8%(26/119)

    となっていて、多くの人が併願校に出願していました。

    併願校の出願校数は、1校が25人、2校が22人、3校が20人、4校が13人、5校以上が13人で、全体として平均は2~3校程度でした。

    併願校の出願校数は
出願なしが21.8%
1校が21%
2校が18.5%
3校が16.8%
4校が10.9%
5校が10.9%
でした

    まずは、併願校に出願した人の回答を詳しく見てみたいと思います。

    出願形式や受験結果について

    どのような大学をどのような方式で出願したか、複数回答可で質問したところ、

    • 私立(一般):99 人
    • 私立(共通テスト/センター試験利用):109 人
    • 国公立大学(前期日程以外、防衛医科大学校含む):44人
    • その他(防衛医科大学校など):2人

    となりました。

    なお、私立併願者の中には共通テストと一般受験の併用型や英語4技能テスト利用方式に出願した人もいました。

    どのような大学をどのような方式で出願したかは人それぞれのようです。

    また、実際の受験有無や合否の内訳は以下の通りでした。

    • 出願のみで受験せず:54 人
    • 併願校に合格:165 人
    • 併願校に不合格:26 人

    次に、国公立大学、私立大学それぞれの出願理由を詳しく見ていきましょう。

    国立大学(前期日程以外)に出願・受験した理由

    次に、国立大学(前期日程以外)に出願した人に、その大学や方式を選んだ理由、自身が感じていたレベル感を質問しました。

    多くの人が重視していたのは、「自分のやりたいことができる」「ここなら行きたいと思える」ということでした。回答を一部抜粋して紹介します。

    • 人文学系で東大の次に充実しており、一浪してこれ以上浪人できない身の自分が、進むことになっても納得できるから
    • 国家公務員総合職試験に合格者を多数輩出しているから
    • もともと医学に興味があり、東大か医学部か迷ってもいたので、受かれば入ろうかと思って、東大と同じレベルの大学を受けた。

    合格したら行きたいと思える大学だからこそ、出願・受験する価値があるということではないでしょうか。

    ただ、次のような回答もあり、良くも悪くも全員がはっきりとした考えを持っているわけでもないようです。

    • (その大学のある地域に)旅行に行きたかったから
    • なんとなく

    また、併願先の国公立大学(前期日程以外)の受験に対するレベル感については以下の通りで、安全校を選択する人も挑戦校を選択する人も同程度のようです。

    • 安全校(ほとんど失敗しない限り合格できるレベル感):16 人
    • 相応校(自分の実力に合ったレベル感):13 人
    • 挑戦校(難易度が高く合否を読めないレベル感):12 人

    私立大学に出願・受験した理由

    続いては、私立大学に出願・受験した人に、その大学や方式を選んだ理由、ご自身が感じていたレベル感を質問しました。

    まず、共通テストやセンター試験を利用する方式を選んだ理由では、現地に行く手間がないことを挙げた回答が多かったです。

    中には、共通テストの自己採点があっているかを確認する意味で出願したという人もいました。ちなみに筆者もその一人です。

    次に、一般入試を選んだ理由には様々なものがありました。そのうちの一部を紹介します。

    • 第一志望校とレベルが近いところを受験して練習する
    • 確実に合格できるところを受験する
    • 元々その大学に憧れていたから

    また、併願先の大学に対するレベル感(国公立大学と同様に「安全校・相応校・挑戦校」の3タイプ)に基づき、出願校数ごとの傾向を分析しました(ここでは、3タイプすべてを受験し、かつ特定のタイプが半数に満たないケースを「バランス型」と定義しています)。

    出願校数が1校の場合、半数近くが安全校を選択しており、挑戦校へ出願したメンバーは全体の20%弱にとどまりました。併願校数が少ないからこそ、本命である東京大学の対策を最優先しつつ、確実に合格を手にすることができる戦略をとっていると考えられます。

    出願校が一校のメンバーの受験校タイプは
安全校が12人
相応校が9人
挑戦校が5人
でした

    出願校数が2~3校の場合、半数近くが安全校と相応校のセットの形で併願しており、安全校または相応校と組み合わせる形で挑戦校を受験した人も比較的多くいました。複数の大学を併願する場合、1校のみの併願の場合と比べると確実な合格を狙いつつも、実力に見合った大学や上位校への意欲も反映した選択を行っていることが分かります。

    出願校が2~3校のメンバーの受験校タイプは
安全校のみは3人
相応校のみは3人
挑戦校のみは2人
安全校+相応校は19人
安全校+挑戦校は6人
相応校+挑戦校は5人
バランス型は3人

    出願校が4校以上の場合、挑戦校を一切受けない層が約1/3を占める一方で、残り約2/3は3タイプすべてを網羅しています。後者の層においても、挑戦校が半数を超えるケースはなく、安全校や相応校を一定数併願する傾向は出願校数によらず変わらないようです。併願校数を増やすことで、滑り止め校を盤石にしつつ、第一志望に近いレベル帯へ選択肢を広げていると考えられます。

    出願校数が4校以上のメンバーの受験校タイプは、
安全校のみは1人
安全校+相応校は8人
バランス型は4人
安全校が半分以上は6人
相応校が半数以上は4人
挑戦校は半数は3人でした

    併願校を受験しないという選択の理由

    前述したとおり、併願校を受験しなかった人も一定数いました。その人たちはなぜ併願校に出願しないという選択をしたのでしょうか。

    こちらへの回答のとして以下のような回答が見られました。

    • 東大の受験に向けての勉強や東大の受験に集中したかった
    • 「『落ちても行ける大学がある』という状況を作りたくなかった」「学部を決めていなかった」
    • 「行きたいと強く思える大学がなかった」「落ちたら浪人してでも東大に行く」

    「第一志望校にどうしても行きたいと思っていて、他の大学に進学するつもりがなかった」というのは大きな理由のようです。

    まとめ

    併願校は受験・出願した人の方が多く、その中でも大学の種別や受験方式は様々でした。

    併願校を受験・出願するならば、自分のやりたいことができ、行きたいと思える大学はどこなのかを考えてみましょう。

    そのような大学が見つからないならば第一志望校のみを受験するという選択肢もあり、それにも第一志望校に向けての勉強に集中できるというメリットもあるようです。

    受験方式についても多様なものがあるので、自分に合ったものを探してみると良いのではないでしょうか。

    おわりに

    以上、志望校や併願校の選び方について、FairWindメンバーへのアンケート結果も踏まえながら紹介してきました。

    この記事は「これが正解である」と言いたいのではなく、「こんな考え方もあるよ」と紹介することを目的としています。

    そのため、ここで紹介した考え方も参考にしながら、自分なりに考えて自分なりの進路を決めていってほしいと思っています。

    この記事が、自分自身の進路について調べたり、考えたりするきっかけになれば幸いです。

  • 精密工学科〜機械系学科へのススメ〜

    精密工学科〜機械系学科へのススメ〜

    1. 精密工学科とは

    こんにちは!
    ここでは精密工学科がどんな学科かみなさんに紹介します!

    うちの学科はRT(ロボテク)とPT(プロテク)の2つを大きな軸として教育が行われています。

    ロボテク(Robot Technologies)とはみなさんがイメージするロボットの開発はもちろん、ロボットの動きを制御する制御工学や、動きを感知するセンサ工学など、機械を人間の意思の通りにコントロールしようとする学問のことを指します。一方プロテク(Production Technologies)とは、コンピュータによる設計技術、高い精度で原料を加工しようとする加工学、材料の長さや大きさを正確に計測しようとする計測学など、製造技術の高度化、デジタル化を目指す学問のことを指します。

    これらは密接に関わっているものであり、この2つを基礎からしっかりと教えることで、将来社会で活躍する人材を育成している学科です。


    2. 授業紹介

    さて学科の説明は以上ですが、ここまでではまだどういうことを勉強しているのか、あまりイメージがついていない人も多いのではないかと思います。そこでみなさんには僕が受けた授業の中から個人的に面白かったものについて紹介させてもらいたいと思います!そこからどんなことをやるのかイメージを持ってもらえたら幸いです。


    a. 精密計測工学

    小さなものを加工したいときにはそもそも長さを正確に測る必要があります。しかし物を正確に知り、人に伝えるためには知識が必要です。その知識を学ぶのがこの授業になります。
    例えば同じ10cmという結果でも、1cmごとに目盛りが書いてある定規を使ったのか、それとも0.001cmごとに目盛りが書いてある定規を使ってちょうど10cmだったのかではその長さの正確さが全然違いますよね。

    普通に日常生活を過ごす分にはそんな違いは気にしなくても問題ありませんが、精密機器を作る上では0.001mm単位での高い精度の加工が求められます。そしてその精度の小さなものを作る時に、前の工程で1cmごとに目盛りが書いてあるような荒い定規で材料を測ってたら、精密な機械は作れませんよね。

    じゃああらゆる製品を最大限正確に測ればいいかというと、そんなことはありません。正確に測ろうとすればするほど手間もお金もかかるので、1つの製品を作るのに必要以上のコストがかかってしまいます。

    そのため必要なのは「適切な精度の計測を行うこと」「よりよい計測の方法を追求すること」なわけです。
    この授業ではそういう計測に関わる事柄を学びます。

    ここまで聞いて「面白くなくね?」と思う人もいるかもしれません笑。実際僕も授業を聞いているだけではいまいちピンとこないし、面白くないと感じることもありました。
    しかし実際の加工機械を見学させていただき、この考え方が非常に重要なものとして取り扱われているところをみて、この授業の必要性を理解し、非常に奥が深い面白い分野だと感じることができました。

    高校生のみなさんはこの授業の説明を聞いて、「この分野面白そう!」って感じてもらう必要はありません。(もちろん面白いと感じてもらえたらそれに越したことはありませんが)ただ機械系の学問を受けるためにはこのような学問を学ばなければならないってことを知ってもらえればいいのかなと思います。


    b. 画像処理工学

    こちらは今話題のDeep Learningとかと関連して非常に人気な学問です。
    この分野では「画像をどのようにして加工、処理するか」ということを学びます。

    例えば写真を撮って取り込んだ時、様々な理由で綺麗に取り込むことができないことがあります。カメラを持つ時の手ブレ、写真を電子データに変換する際の他の電気部品からの悪影響etc。これらの綺麗に取り込む上での悪影響を「ノイズ」といいます。このノイズがどういうものかを理解すれば、逆にそのノイズを消す方法も考えることができますよね。そうやって綺麗な画像を出力しようとするのがこの分野です。

    また他の例としては、画像の加工技術について学びました。ぼかしや彩度の強調や、輪郭を強調などといった画像を加工する技術は皆さんにとっても身近な技術だと思います。そういった技術の基礎もこの授業で習うトピックの一つです。

    この授業は別の授業で習ったプログラミングの技術も活かすことで、実際に画像処理を体験してみることができます。自分で作ったプログラミングで、画像を白黒画像に加工したり、画像を半分鏡に映したような画像に加工できたときは嬉しかったです。


    c. 精密工学実践演習

    工学の醍醐味である「実際に何かを作ってみる」ということを体験する授業です。この授業の場合はテーマが3種類に分かれていて、それぞれのテーマについて専門の先生の指導のもと、実習に取り組みます。

    1つ目のテーマは倒立振子という自分の傾きや移動距離を認知して、倒れないようにしながら前に進む簡単なロボットを作りました。(倒立振子については説明するよりも検索してくれた方がイメージがしやすいと思うのでぜひ検索してみてください)

    このテーマでは電気回路を組み立てるところから、傾きを認知してモーターの回転を制御するプログラムを書くところまで全て学生がやります。他の授業で電気回路の仕組みや、速度や傾きを元にモーターの回転数を考える考え方の基本は学んでいるので、その学んだことを生かせる授業となっています。実際に自分が組み立てたロボットが思い通りに動いた時は本当に感動できます。

    2つ目のテーマは生体信号を計測する機器を製作しました。この機器は人の脈拍を確認するものです。脈拍を電気信号に変換するのですが、脈拍は非常に小さなもので、機器の都合上ノイズも入りやすいため、ノイズを減らしつつ電気信号を大きくすることが求められます。その機器を実現するためにグループでどんな回路にするのがいいかを話し合いながら機器を実現させました。

    3つ目のテーマは金属加工、組み立ての演習を行いました。金属を誤差0.001mm単位で精密に加工するには特殊な加工技術が必要です。その特殊な技術を実際に見学したり、金属加工をする際にはどのようなことに気をつける必要があるか、ということを演習を通して学びました。

    どのテーマも前提となる知識は別の授業で習っているのですが、いざ実際に使ってみるとなるとなかなか難しいものでした。しかし実際に使うことでよりその分野についての理解が深まり、学習意欲も向上しました。
    「工学」という学問はものを作るためにある学問です。そのためこうやって実際にものを作る体験ができることは非常に貴重な経験でしたし、何より楽しかったです。


    3. 最後に

    以上が授業の説明となります。
    これを読んでくれたみなさんが精密工学科の生徒が日々どんなことを学んでいるのか少しイメージを持ってくれたら幸いです。これを読んで興味を持ってくれた人は大学の機械系の学科を調べてみるといいと思います。きっとあなたの興味にあった学科を見つけることができると思います!

  • 応用化学ってどんな学問?【東大工学部応用化学科】

    応用化学ってどんな学問?【東大工学部応用化学科】

    1. はじめに

    こんにちは!この記事では応用化学という学問について紹介しようと思います。一口に「応用化学」とはいっても非常に範囲が広いので、主に私の所属する東京大学工学部の応用化学科についての話になる部分もありますのでご了承ください……。
    この記事では、応用化学がどんな学問であるのか、応用化学科がどんな学科であるのかをはじめ、大学の学問と高校の学問の違いなどについても少し触れていきたいと思います。学部選びに悩んでいる方などぜひ読んでみてください!


    2. 応用化学とは

    まずは応用化学という学問について紹介します。簡単に言うと、「応用」とついている通り、世の中に「応用」できる技術や素材などを化学を通じて開発することを目指す学問です。役に立つかどうか、コストや安全性などの面で実用可能かどうかが重要になるので、工学部のもとで学ぶことが多く、東大でも応用化学科は工学部に属しています。

    応用化学は実学なので、自分の学んだ理論や紙面上の学問が、現実ではどのように活用されているのかについて興味のある人におすすめです。他にも、化学に興味のある人はもちろん、情報やIT系など実態の見えにくいものより「物質」を扱いたい人や、一般的にイメージされる科学者・研究者のような職業に憧れる人、世の中の役に立ちたい人などは、楽しんで応用化学を学べると思います。

    ここまでの説明を読んでわかったかもしれませんが、非常に幅の広い学問なので、化学方面に興味があるけどいまいち自分の興味が定まらない……。という人にとっても、化学を幅広く学べるという点で良い学問だと思います。


    3. 応用化学科での勉強

    次に、工学部応用化学科がどのような学部であるかを紹介していきます。先ほども述べた通り、応用化学は化学一般を扱うので、座学で学ぶべきことが非常に多いです。以下に例として、応用化学科で私が学んでいることをいくつかあげてみます。

    ・高校範囲の延長の学問

    応用化学は実学だと言いましたが、そうはいっても「応用」するためには「基礎」も重要です。応用化学科においては、化学の基礎を満遍なく知っておく必要があるので、無機化学や有機化学、化学反応論、高分子化学など高校範囲で習ったような分野をより専門的に学んでいきます。

    例えば有機化学では、高校化学ではどんな反応が起こるかなど丸暗記しないといけない部分が多いと思いますが、大学で分子の構造を詳しく学んだり、電子の動きから化学反応を捉えたりすることである程度理論的に反応を説明することができます。また、実際の研究では反応機構をどのように突き止めているのかなど、実用的な知識も学んでいきます。

    ・より実学的な化学分野

    高校範囲の延長に加えて、より実学の要素が強い学問も学びます。
    例えば、未知の化学物質の分析方法についての学問である分析化学などがその一例です。赤外線やX線を使ったり、電極を利用したりと、様々な方法で分析が行われているので、その原理と応用方法を学びます。

    高校化学では未知物質を扱うことをあまり想定しないと思うので、あまりピンとこない方も多いと思いますが、研究の場ではこの分析化学がかなり重要です。例えば未知の化学反応を発見したとして、結果的に何がどのくらいの割合でできたのかを確かめられなければ論文は書けませんし、応用もできません。つまり、分析化学は応用のための学問と言うことができるため、これは実学だと言うことができます。一方で、分析化学では、何に着目して物質の濃度や構造を調べるかが重要なので、現在では様々な観点からの分析方法が考案されており、実学としてだけではなく純粋に学問としても楽しめます。原子同士のミクロな結合や振動に着目したり、分子の質量で分類したり、分子の作る磁場を利用したりと、高度な理論に基づいて分析機器が作られたりしているので、勉強のしがいがあると思います。

    また、工場や反応器(リアクター)での化学反応効率などを議論する学問である化学工学などもあります。これは特に企業に就職した後に役立つ学問です。化学反応に伴う熱の出入りなどは高校範囲でも扱うと思いますが、実際に工場でその化学反応を起こすとなると、キログラムやトンの単位で物質を反応させることになります。すると反応に伴って発生する熱の量は膨大になってしまい、一歩間違えれば爆発や火事を引き起こしてしまうこともあります。ここまで極端な例でなくても、反応器の形や反応条件によって反応効率に大きな違いが出ることもあります。このように、実際に化学反応や物質の分離を工場のスケールで行うことを想定し、安全な、効率的な化学システムの設計を目指す学問を化学工学と言います。学ぶことが実際にどう生かされているか見えやすい学問なので勉強していて面白いと思います。

    ・融合分野の学問

    上で述べた化学系の分野の他にも、物理の範囲も融合した熱力学や物理化学、ミクロな世界の力学を扱う量子化学、微分方程式やフーリエ変換などを学ぶ実用的な数学、化学反応や分子構造のシミュレーションなどに使うプログラミングの知識……、というように、化学に限らず幅広く様々な学問に触れることができます。高校の理科では物理・化学・生物というように分野がはっきり分かれていると思いますが、大学では学問分野の境界が曖昧になっていきます。例えば化学を突き詰めていくと物理の知識や理論が必要になる、といったようなことが多々あるので、化学に興味があるからといって他の教科や分野をないがしろにせず取り組んでみるといいと思います。

    上では座学を紹介しましたが、もう一つ高校での勉強と違うところは、実験が本格的なところです。これは理系学部一般に言えることなのでおまけ程度に書きますが、高校の時よりも予習をしっかりしたり、レポートも本格的に書くことになるので、理論と現象が結びついて楽しいと思います。私が履修したカリキュラムでは、有機化学、分析化学についての実験と、プログラミングを中心としたコンピュータ演習に取り組みました。本格的な実験は4年生になり研究室に入ってからですが、学生実験でも十分に実験の基本は学べると思います。


    4. 最後に

    長くなってしまいましたが、述べてきた通り応用化学科は化学と化学にまつわる融合分野を幅広く学べる学科です。実社会での研究の場で活躍するために必要な知識をたくさん得られるので、少しでも化学に興味のある人はぜひ検討してみてください!

  • 都市計画の世界へようこそ!【東京大学工学部都市工学科都市計画コース】

    都市計画の世界へようこそ!【東京大学工学部都市工学科都市計画コース】

    はじめに

    みなさんこんにちは!工学部都市工学科都市計画コース4年の齋藤と申します。私からは東大工学部、そして都市工学・都市計画についてみなさんにお伝えしたいと思います。現時点で興味がある人もない人も、是非一読していただけると嬉しいです。


    東大工学部とは?

    東京大学工学部は全16学科からなり、1学年約1000人を抱える東大の中で最も大きな学部です。機械系や化学系、建築系など幅広い学問分野を扱う学部であり、一口に東大工学部と言っても学科によって学んでいることは全然違います(詳しくは工学部のホームページをご覧ください!)

    私が所属している都市工学科は、建築学科、社会基盤学科と共に、工学部の中では建築系としてまとめられます。3学科とも私たちが暮らす”まち”を構成する様々な要素について学び、研究する学科となっており、建築学科はその名の通り建築を、社会基盤学科は道路や橋などの社会基盤(インフラ)を、そして都市工学科は都市そのものを主に扱います(詳しくはリンク先の各学科ホームページをご覧ください!)。それぞれの学科が扱う分野はお互いに関連することもあり、学科をまたいで授業を受けに行くこともしばしばあります。


    都市工学科とは?

    ここからは私が所属する都市工学科について詳しくご紹介していきます。都市工学科は「都市計画コース」と「都市環境工学コース」の2つのコースに分かれています。多くの人は理科一類から進学していますが、文系科類を含む他の科類からも一定数進学しています。個人的な印象ですが、他の工学部の学科に比べて文系出身者が多いように思います。

    都市計画コース

    都市計画コースは、都市計画や都市デザイン、交通、住宅、防災など都市空間そのものや都市を構成する様々な要素を扱っています。詳しくは後述します。

    都市環境工学コース

    都市環境工学コースは、大気汚染や水質汚濁、廃棄物など都市の環境問題を構成する様々な要素を扱っています。授業ではそれぞれの要素についての基礎知識から現在に至るまでの歴史や対策、これから期待される解決法などを学んでいきます。また、実験演習では様々な物質の測定・分析などを行い、実際の現場で使える技能も身につけていきます。


    都市計画コースとは?

    ここでは私の所属する都市計画コースについてさらに深く迫っていきたいと思います。

    授業について

    2年生の秋から本郷キャンパスで学科の本格的な勉強が始まり、4年生の夏までの2年間で都市について研究していく上での基礎知識を授業を通して獲得していきます。計画論について学ぶ「都市計画概論」、デザイン論について学ぶ「都市デザイン概論」、公園など緑地について学ぶ「緑地計画概論」、都市交通について学ぶ「都市交通論」、都市防災について学ぶ「都市安全計画」、広域的な計画について学ぶ「広域計画」など、幅広い分野に関する授業が開講されており、これらの授業を通して都市を見て分析する目を養っていきます。また、都市計画に関わる法律を学ぶ「都市・まちづくりと法」、歴史から様々な思想を学ぶ「都市計画史」といった授業を通して、都市計画を考える上で必要なルールや思想も学んでいきます。そして、一通り基礎知識を身につけた4年生の秋以降は、卒業論文に向けて研究を集中的に進めていきます。

    ここまで読んだ人の中には、「工学部なのに文系っぽくない?」と思った人もいるのではないでしょうか。実際、理系学部の中でもかなり文系によっているのがこのコースの特徴で、『文科四類』と比喩されることもしばしばあります(笑)。こういう特徴があるために、文系出身者が多いのではないかと思います。とは言っても理系学部なので、都市を分析する上での数理的手法を学ぶ「都市工学数理」など、理系っぽい授業も開講されています。ただ、多くの授業は理系的知識を必要とせず、数理系の授業も難しい計算をするわけでもないため、文系出身者がついていけないということはありません。安心してください。


    演習について

    都市計画コースの授業の中でも、唯一の必修科目となっている授業が「演習」と呼ばれる授業です。この演習では、実際の敷地を対象とした都市空間の設計や、実際の自治体・エリアを対象とした都市計画マスタープランの策定を通して、都市計画に関わる上で必要になってくる技能を身につけていきます。自分の手を動かしたりグループでの議論を行ったりしながら、その土地に暮らす人やライフスタイルをイメージして一つのものを作り上げていくのがこの演習の特徴です。自分たちの考えを突き詰めながら実際のものに落とし込んでいくため、多くの人がかなりの時間を演習に費やします。模型製作や発表準備のために泊まり込んで作業することもしばしばあり、周りからは”ブラック学科”と揶揄されることもありますが、やっている本人たちは作業を通して自分のイメージがどんどん具体的な形になっていくので割と楽しんでいます(笑)


    研究について

    4年生になると、学生は研究室に配属され、卒業論文に向けて1年かけて準備をしていきます。前期で研究の道筋をたて、後期でゴリゴリと研究を進めていく形になります。

    都市計画コースには「都市計画」「都市デザイン」「地域デザイン」「環境デザイン」「まちづくり」「住宅・都市解析」「都市交通」「国際都市計画・地域計画」「都市情報・安全システム」「空間デザイン」の全部で10個の研究室があります(空間デザイン研究室は厳密には大学院新領域創成科学研究科の所属です)。授業では各分野を総合的に学んでいましたが、研究室は各分野について専門的に深く研究する場所になっています。各研究室は数名の教員と学部生、修士課程・博士課程の大学院生によって構成されており、学科に比べて教員との距離が近いことが特徴です。

    ちなみに私は都市情報・安全システム研究室に所属しています。この研究室は主に都市防災に関する研究を行っており、災害に対して都市がどのようにあるべきか、被害を抑えるために都市計画はどうあるべきかについて日々考えています。


    進路について

    工学部はほとんどの学生が大学院に進学します(最も進学率が高い機械情報工学科はなんと進学率98%!)が、都市計画コースの大学院進学率は6〜7割とやや低めになっています(ちなみに都市環境工学コースも同じくらいです)。大学院は工学系研究科都市工学専攻のほか、新領域創成科学研究科や情報学環・学際情報学府を選ぶ人もいます。就職先は国家公務員や地方公務員、不動産・デベロッパーといった民間企業が多いですが、コンサルタントや金融関係などその幅は多岐にわたっています。


    おわりに

    ここまで都市工学科・都市計画コースについて紹介してきましたがいかがでしたでしょうか? この学科・このコースは、私たちが日々暮らしている”まち”について深く考えていくことができるところになっています。拙い文章でしたが、興味を持っていただけたら嬉しいです!

    最後までお読みいただき、ありがとうございました!
    (執筆:2019年)

  • 【東大法学部】法学部での学び

    【東大法学部】法学部での学び

    はじめに

    このページに足を運んでいただきありがとうございます。法学部第一類3年の髙橋と申します。このページでは、東大法学部の特徴や学生生活、法学部でどんなことを勉強するのかといったことをお話していきます。少しでも東大法学部や法学そのものに興味を抱いていただけたら幸いです。


    法学部とは

    東大法学部では類という制度を設けて、法学部の誰もが政治や法学を学習できるようにしています。法学部の類は4年生進級時に他の類への転類が容易であり、履修の仕方によってはどの類に所属していても内容上かなり似た学習ができるようになっています。他学部の学科のように高い障壁で区切られているものではありません。学生は以下の3つの類のいずれかに所属しています。

    第一類(法学総合コース)

    第一類の特徴は法学・政治学の科目の中で選択できる科目の自由度が比較的高いことです。筆者も第一類ですが、同じ第一類の友人と互いの時間割を比べてみると履修している科目にかなりの違いが見られます。また、外国語科目が必修であることから、法学を幅広い視点から理解することを目指す理念が窺われます。将来は公務員や民間企業に就職する人が比較的多いです。

    第二類(法律プロフェッションコース)

    第二類の特徴は必修科目が他の科類に比べて多いことです。必修科目のほぼすべてが、憲法、民法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、商法、行政法といった司法試験に合格するために必要となる科目です。そのため第二類は弁護士、検察官、裁判官などの法曹志望者を中心に、将来「法律のプロ」となることを目指す学生が多く集まっています。

    第三類(政治コース)

    第一類と同様、第三類は選択できる科目の自由度が比較的高いですが、「政治コース」という名前の通り、取らなければならない政治系の単位が多いことが特徴です。また、第三類のもう一つの特徴として、リサーチペーパーの提出が必須であることがあります。これは他の学部でいう卒業論文のようなもので、法学・政治学の特定科目のテーマについて、指導教員の指導を受けながら、一定程度掘り下げた研究を行ったうえで論文を執筆するものです。民間や公務員、研究者など多様な進路を志望している人がいるように見受けられます。

    ちなみに、どの類を選んだとしても、卒業までに取らないといけない単位の数は80単位と共通です。ただ、後述の通り法学部の授業は2年生から前倒しで開講されるので、80単位全てを3,4年生で取得する必要はありません。


    法学部の授業

    法学部の授業形態には講義演習の2種類があります。

    講義

    さまざまな規模の教室で、教員が語りかけるというのが基本です。先生が一方的に話し続ける形態になりがちですが、先生方もその道の最先端の研究を続けている方ばかりですから、含蓄豊かで興味をそそられ、印象に残る内容も多いです。また、講義のなかにも、憲法や民法第一部など、誰もが履修するような定番科目もあれば、医事法や都市行政学、情報社会と法など、特定の先端的な課題について講義する特別講義と呼ばれる科目もあります。

    演習(通称ゼミ)

    演習は、特定の主題について自ら調査・発表し、教員や他のゼミ生と議論をしてその主題について議論を深めることが狙いです。30名以下の少人数で開講されることが基本で、講義形式の授業よりも教員や他の履修者との距離が短く、交流を深め、より切磋琢磨することができます。東大法学部では、どの類に所属している学生も、最低1回はいずれかの演習を履修することが求められていますが、自分の興味関心に応じてさまざまな演習に参加する学生も多いです。


    法学部で勉強すること

    例えば、民法709条という非常に有名な条文を例にとってみます。

    (不法行為による損害賠償)
    故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害したものは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

    ここでは「故意」というのは「わざと」、「過失」というのは「不注意で」くらいの意味だと理解してもらえたら大丈夫です。709条は、不法行為制度の中核となる条文です。不法行為制度とは、「他人の行為または他人の物により権利を侵害された者(被害者)が、その他人または他人とかかわりのある人に対して、侵害からの救済を求めることのできる制度」です(潮見佳男著『基本講義 債権各論Ⅱ』1p)。

    自らの権利を侵害されたら、相手に救済を求めることができる―非常にシンプルなことを言っているようにも思います。しかしながら、709条一つとってみても、考えないといけない問題は多岐にわたります。例えば、以下のような論点が挙げられます。

    因果関係の問題

    2つ以上のものの間に原因と結果の関係があることを因果関係といいます。不法行為の場面で損害賠償を認めるためには、加害者の行為が原因となって被害者の権利や利益が侵害されたという結果が発生したこと、つまり両者の間に因果関係があることが必要です。
    しかしながら、何をもって因果関係があると判断するかは時として難しい問題です。その典型例が公害です。工場の稼働による汚水で水質汚濁が発生し、近隣住民の健康被害が発生したとします。水質汚濁から健康被害への過程は目には見えないメカニズムで動いている以上、何をもって、工場の稼働が原因で健康被害という結果が発生したと判断するのか ― その枠組みが必要となります。

    損害の算出方法

    仮に加害者の行為と被害者の権利や利益の侵害について因果関係があると認められても、被害者に具体的にどのような損害が発生し、どのような形でその損害分を算出するのかが問題となる場合があります。
    例えば、公害で化学物質が体内に取り込まれたことで体が自由に動かなくなり、働けなくなった場合のことを考えます。賃金などの将来得られるはずであった利益は逸失利益(いっしつりえき)と呼ばれます。将来得られるはずだった利益が得られなくなったことも立派な損害ですから、被害者は逸失利益分も加害者に賠償請求ができるはずです。しかし、もし事故が起こらなかった場合将来得られたであろう利益がどれくらいの額だったかなんて本当のところは誰にも分かりません。とはいえ、被害者側に逸失利益分の損害を認めるなら、その算出をする必要があります。そのため、どのような統計的データを用いて、どのような算出方法を採るのが妥当と考えるかが問題となります。

    実際に法を運用し、以上のような事例や他の様々な論点に対処するためには、法の解釈という作業が必要不可欠となります。解釈は判例や他国の事例、時には法律が作られた際の立法の議論なども参考にしつつ、妥当な見解を探求する行為のことです。

    一体なぜ解釈という作業が必要なのでしょうか。それは世の中で起こっている様々な事象のうち、どのような事態が、どの条文の要件に該当するのかを予め記述しておくことは不可能だからです。また、仮に世の中のあらゆる事態に対して網羅的に対処できるように条文を整備できたとしても、要件を満たした場合の効果(709条で言えば、効果は「加害者が賠償する責任を負う」ことを指します)が条文に載っている内容で妥当なのかは議論が残ります。このように、実際に法を運用していくには解釈という作業が必要不可欠なのです。

    以上のように、法の趣旨を解釈によって探求していく学問を法解釈学といいます。法学系の科目の大半はこれにあたります。法解釈学は、社会で実際に用いられている法である実定法に関する研究を行う実定法学の主要な学問です。(ちなみに実定法とは異なる法概念として、人間や事物の本性をその基礎とする自然法があります。高校世界史で習った方もいるかもしれません。)一方で、法学の基礎をなす理論的な学問分野の総称を基礎法学と呼びます。基礎法学を通じて、より多角的な視点から法を分析することができるようになります。以下に簡単に例を挙げておきます。

    • 法社会学…法にまつわる社会の現象を分析する学問。
    • 法哲学…法と法学の諸問題を原理的なレベルにさかのぼって哲学的に考察する学問。
    • 法史学…過去の法現象、法制度、法的慣行、法観念、法思想などを研究する学問。
    • 比較法学…各国や各社会の法を比較研究する学問。

    もちろん東大法学部では法学だけでなく政治学も学べます。筆者が第一類のため政治学の学問紹介は割愛させていただきますが、政治学も大変刺激的な学問です。文献を通じて高校の現代社会で出てくるような歴史上の政治思想家の思想を深く探求したり、統計学的な手法を用いて選挙制度と選挙結果などの因果関係などを分析したりするようなことも行います。


    進学選択

    文科一類の学生の大半が法学部に進学します。文一の学生の場合、前期教養学部で取らないといけない単位を取り切ればほぼ確実に法学部に進学することが可能です(2020年現在)。いっぽう、他の科類から法学部に進学しようとする場合はある程度良い成績を収めなければなりません。


    卒業までの流れ

    1年生

    文一の学生を含め、法学部の専門科目は開講されません。ただ、前期教養学部の準必修科目として「法Ⅰ」や「政治Ⅰ」などの法学や政治学の入門科目が開講されており、これらを履修する文一生も多いです。文一生は、自分が興味ある分野を中心に、法学に限らないさまざまな教養科目を履修します。またすでに司法試験を目指すことを決めているような人の中には、1年生のころから司法試験予備校に入って法律の勉強を進めている人もいます。

    2年生

    本来は後期課程の専門科目は3年生から開始されるはずなのですが、法学部の場合は前倒しで2年生の4月から法学部の専門科目が開講されます。駒場キャンパスの900番教室という大教室で、憲法や民法、刑法などの科目の基本を1年かけて勉強します。

    3年生~4年生

    各類に分かれて自分が取りたい、取らなければならない科目を履修する一方で、司法試験予備試験や国家公務員試験にチャレンジする学生もたくさんいます。東大法学部では自発的に各種試験の勉強会が生成される土壌があり、その勉強会で交友を深めたり、仲間と切磋琢磨して法学への理解を深めたりします。

    卒業後

    2019年のデータによると、民間就職者は96人、公務員となった人は47人、法曹や研究者などを目指して大学院に進学した人は83人となっています。以前は東大法学部といえば公務員や法曹、研究者になる人がほとんどで民間就職者はあまりいなかったようですが、現在ではむしろ民間就職者が全体のかなりの割合を占めていることが分かります。


    最後に

    筆者は前期教養学部時代に、「災害復興と法」という、防災や災害復興に法がいかなるかかわりを持つべきかについて考えるゼミに入っていました。そのゼミの中でのとある外部講師の講演が印象に残っています。その講師の方は大学の教員を務めるかたわら、震災などの災害に遭った方を弁護士の立場から支援する活動を行っていました。

    「災害に遭ったら、まず何よりも役所にり災証明書を発行してもらってください! この証明書があるかないかで、その後に受けられる支援やその手続きの早さが全然違ってきます!」「震災が起こっても、手続きさえ踏めば、予め法律で定められている内容はちゃんと履行されるはずです」と熱っぽく語るその講師は、他の誰よりも法や法律の持つ力を信じていたように感じられました。筆者は今でもたまにこの講師の姿を思い出しては、法や法律が秘めている大きな可能性について考えさせられます。

    法律はこの社会の在り方を規定しているものです。法学部で既存の法の趣旨をとらえ、それを活用していくための素養を養うこと、現実世界を法律という観点から分析し、それが正しいのか問い続けることは、皆さんにとっても、皆さんを取り巻く社会全体にとっても有意義なものになると思います。皆さんが今後法学を学ばれる日が訪れることを心からお待ちしています。
    最後までお読みいただきありがとうございました。

  • 【東大教育学部】教育学部って何を学ぶ?先生になるの?【教育心理学】

    【東大教育学部】教育学部って何を学ぶ?先生になるの?【教育心理学】

    はじめに

    みなさん、こんにちは。このページを読んでくれている皆さんは、教育学部や心理学にちょっとでも興味があるのではないかと思います。

    私は東京大学教育学部教育心理学コースというところに所属しています!そこで、私からは教育学部って何を勉強するところなのか、そして自分が所属している教育心理学コースでは何を勉強しているのか詳しく書いていきます。

    教育学や心理学に興味がある人はぜひ読んでみてください。東大の教育学部についてもっと詳しく知りたいと思った人は公式のホームページもみてみてください。

    教育学部って何するところ?

    教育学部の人は何を勉強しているのでしょう?先生になるために行くところと思っている人も多いと思うのですが、必ずしもそうではありませんし、東大の教育学部では先生になる人の方が少ないです。

    では何を勉強しているのかというと、「教育」に関係することを幅広く勉強しています。

    …そんなこと言われてもわかったようなわからないような気がすると思うので、具体的にいくつか取り上げてみます。

    先生になる、ということから近い範囲だと「どうすれば勉強したことが理解できるようになるのか」ということや、「いじめや不登校などの学校内の問題をどうすれば解決できるか」ということを勉強しています。他には「良い教育とはどのようなものか」、「博物館や図書館などの学校外の学びの場をどう構築するか」、「国の教育政策としてどのようなことをするべきか」などなど、教育に関係することをいろいろな角度から勉強・研究しているのが教育学部です。東大では教育学部の中に5つのコース(基礎教育学、比較教育社会学、教育実践・政策学、教育心理学、身体教育学)があり、自分の興味・関心に近いところから”教育”を考えることができます。

    もちろん教育学部に進学すれば、先生になるための授業を受けて、必要な知識や技能を得ることもできます。どんな側面からでも、教育に興味があるということであれば自分のやりたいことを学べるのではないかと思います。

    教育心理学って?

    ここでは私が所属している教育心理学コースについて詳しくお話しします!

    教育心理学はその名の通り教育を「心理学」の角度から見ていく学問です。教育学部で勉強していることの教育心理学一つをとってもすごく広い範囲のことを扱っています。
    子どもの成長・発達がどんな風に進んでいくか(発達心理学)、勉強したことがどのように理解されていくか(教授・学習心理学)、学校内で困っている生徒にどんな対処をしてあげるとよいか(臨床心理学)、などなど色々あります。このようなことを調べていくためには何かしらのデータが必要になりますよね。そのためのデータの分析の仕方として統計学も勉強しています。さらに学習の仕組みを深く理解しようと思ったら、人間の脳がどんな構造になっているのかということなども必要になることもあります。コースに所属している学生全員が今あげた全てを勉強しているわけではないのですが、文系・理系どちらの知識も大事になってきます。

    授業内容紹介

    ここまで教育心理学コースでどんなことを勉強しているのかざっくりとお話ししてきました。でも具体的に何をしているのかイメージが湧かないと思いますので、実際に私が受けた授業でどんなことをやったのか紹介します!

    教育心理学コースの必修科目(全員が必ず履修する必要がある授業)に「教育心理学実験演習」というものがあります。この授業では先生から話を聞く講義形式ではなく、学校に行ったり、実験をしたり演習形式で学びます。そのうちいくつか面白かったものを紹介します!

    知能検査

    テレビなどで「あなたのIQは〜〜」っていうのを見ると思います。そのIQ(知能指数)を測定する実習をしました。

    実習で使った知能検査はWAIS-Ⅲと呼ばれるものなのですが、この知能検査を受ける人は、基本的に生活する中で何かうまくいかなくて、知的能力が原因なのではないかと考えられる人です。「IQめっちゃ高い!!すごいだろ〜!」というためにあるわけではありません(そういう人向けのものもありますが…)。

    例えば細かいところに集中することが苦手だと知能検査でわかったら、その人のために細かいところを強調して示してあげるなど、手助けできますよね。その人がどのようなことが原因でうまくいってないのか見つけてあげて、生活しやすくしてあげるために主に使われています。

    投影法(絵を描く)

    投影法は心理検査の一つなのですが、みなさんが思う「心理テスト」にすごく近いものです。

    授業でやったものでは、真っ白い紙に1つ木を書いて、その書き方から自分がどんな性格傾向があるか分析していきます。木の幹の太さ、葉っぱの数、根っこの張り方など色々なところをみます。

    自分も木を書いて自分で分析したのですが、私は枝が上向きに伸びていて、自信や安定感があるけれども、幹に線が多くて傷つきやすい、という感じでした。当たっているような当たっていないような……。

    質問紙調査(アンケート)

    例えば、「A型の人は几帳面」かどうか気になった時に、どうやって調べたらよいでしょうか。A型かどうかは血液を検査すればわかりますよね。同じ血液を検査したら同じ結果が出るはずです。では、几帳面かどうかはどう調べればよいでしょう。几帳面かどうかははっきりと数値や結果として表すことはできません。そこでいくつか「几帳面さ」と関係しそうな質問をして、几帳面さを得点化してみます。

    「あなたは、部屋が片付いていないと落ち着かないですか」「あなたは、ものの向きがバラバラだと直しますか」など質問を作ってみて、それで「几帳面さ」を測るのです。しかし、作った質問が本当に几帳面さを測っているのかわかりません。そこで、あらかじめ正しいとされている質問項目や、複数の項目との間の相関関係をみるなどして質問内容をより洗練したものにしていきます。

    こうして、作成された質問紙(アンケート)を使うと、A型の人は几帳面かどうか関係を測ることができます。その際統計的な処理が必要となってきます。

    この質問紙を作って分析するという流れを授業では実際にやりました。簡単そうに見えることかもしれませんが、学問として十分なほど精度の高い質問紙を作って、分析するのは非常に難しくて、奥深さを感じました。

    最後に

    ここまで読んでくれてありがとうございます!少しでも教育学部って何してるんだろう?という疑問が解消したり、大学でしていることのイメージがついたりしたら嬉しいです!この記事では私が所属している教育心理学コースのことが中心だったので、他の学科でやっていることが知りたい人は、最初にもあげた通り、公式のホームページから色々みてみてください。他の大学のホームページも見てみると、それぞれの大学の特色が出ていて進路探しの参考になると思います。自分の進みたい進路目指して頑張ってください!!

  • 【東大理学部】生物学の世界をのぞいてみよう

    【東大理学部】生物学の世界をのぞいてみよう

    はじめに

    私は東京大学理学部の生物学科に所属しています。

    まだ生物学においては駆け出しも駆け出し、まだまだひよっこの学部3年生です。しかしこんな私でももうすでに生物の世界に大変魅せられています。当分の間抜けられそうにはないです(笑)。

    何がそんなに面白いの?理学部って何するの?生物学科って普段何してるの?生物勉強してその先どうなるの?などなど疑問に思うことはたくさんあるかと思いますが、実際に所属しているからこそわかる生物学の世界、生物学科の生活をお伝えしようと思います。

    生物学とは?

    これを読んでいる皆さんは今手元に生物の教科書があるでしょうか。もしあるならば、目次をさらっと見てみてください。細胞の構造、光合成、筋肉の収縮の仕組み、エネルギー生産……..などなど色々と項目が書いてありますね。その目次はよくまとまっているものだと思います。というのも、高校で扱う内容も、大学で扱う内容も大まかなくくりとしてはそんなに大差がないのです。

    生物学科で学ぶ内容と、それに対応する高校での学習内容をあげてみたいと思います。

    • 細胞生理学(高校:細胞の構造、細胞小器官の働きなど)
    • 発生生物学(高校:ウニとカエルの発生)
    • 遺伝学(高校:メンデルの遺伝の法則)
    • 分子進化学(高校:分子時計、中立進化説)

    などなど、高校で学ぶ生物の内容は大学で学ぶ内容に完全に直結しています。だから、高校で生物をやっている人ならとてもとっつき易い学問であるし、高校で生物を扱ってない人にとっても入り込みやすい学問であると言えるでしょう。

    では、大学では何するのでしょうか?

    大学で学ぶ生物学

    大学ではまず、高校の内容に加えてさらに突っ込んだ内容、最先端の内容を学びます。生物の世界を学び、最先端で何が行われているのかを把握した後に研究の世界に飛び込むことになります。

    生物学の何が面白いのか?

    生物学をやっている方々に生物学の魅力は何かと問うと、十人十色の答えが返ってくると思います。質問の答えになっていないですね(笑)

    ここではあくまで私が、現時点で感じている面白さについて語らせてもらうと、生物学は「自分の周りの世界をもっと鮮やかにする」学問だと思っています。道を歩いているだけで、この広葉樹は何才くらいで、どのような環境をくぐり抜けてここまで大きくなったのか?、この花はなんでこんなに赤い色をしているのか?、身の回りの自然物にまず気づくことができ、視界に入ってくる情報に対して色々な疑問をもち、勉強して知識を増やすことでその疑問を解決することもできるのです。

    生物を勉強していると、このように、単なる背景として捕らえられていた身の回りの世界が途端に意味を持ってくるようになり、なんとも不思議な充足感に満たされます。ここが生物学の面白さではないかと今は思っています。

    また、この先もっと違う面白さを見つけることができるのではないかと期待もしています。

    理学部って?

    理学部って他の理系の学部とは一線を画すのではないかと私は感じています。研究された結果がそのまま社会の役に立つなんてことは少ないでしょう。

    それでも理学部という学部が存在する意義は、理学部が学問の基盤を作る大変重要な役割を担っていることにあるのではないかと思います。農学部、工学部、医学部、薬学部といった、研究結果が社会の役に立つことが想像しやすい学部の研究はひとえに理学部での基礎研究をベースにしたものではないだろかと私は考えています。この世界の知識のベースを作る学部としてとても誇り高い学部であると私は考えています。

    とまあたいそうなことを書いて少しばかり恥ずかしいですが、理学部に所属する人の特徴としてやはり勉強が好き、課題に向き合い解決したいという思いを持っているという特徴があるように思います。

    高校までは周りの友達に気後れして勉強が好きだなんて言えなかった、という人が生き生きと勉強できる自由な場でもあるでしょう。そんな雰囲気の理学部が私は好きです。

    東京大学理学部生物学科の魅力!

    どんな生活?

    大まかには、3年生は午前中は座学の授業、午後は学生実験、定期的に野外実習(山や海での現地調査)、4年生以上になると研究室に配属され、各々のテーマで研究という流れになります。

    ここでは3年生のある一日の流れを紹介してみます。

       
    8:30-10:151時限目「遺伝子機能学」この日は細胞分裂のS期に起こる、重要な機能について学習。
    10:25-12:102時限目「動物生理学」この日は、神経伝達経路における、カルシウムイオンチャネルの作用についての講義。
    12:10-13:00お昼休み3年生のみんなが集まる学生控え室で、午後の実験で何をするか確認しながらご飯を食べます。
    13:00-18:00学生実験大腸菌のプラスミドに対しての遺伝子組み換え操作。程よい緊張感が実験室を包みます。
    19:00-バイトに行く人もいれば、夜ご飯を食べる人、実験のレポートを書く人など様々です。

    通常の授業、学生実験に加えて3年生前期ではすでに大学の臨海実験所を利用した6泊7日の実習、大学付属の植物園とその近くの山を利用した3泊4日の植物実習、富士山の高山地帯の植生を調査する3泊4日の実習などに行きました。

    生にたくさん触れ、机上の空論ではなく実際の観察実験に基づいた生命現象の解明を行うという生物学基礎研究の基礎を学ぶことができます。

    東大理学部生物学科の教授陣

    どの教授も世界の生物学界の第一線で活躍されている方ばかりです。知識が本当に豊富で授業はとても楽しいし、我々学生にも的確にアドバイスをくださります。生物を勉強、研究する環境として大変恵まれていると思われます。

    また、普段山や海などのフィールドに出向いて研究されている先生方も多く、そのような先生方は非常に体力があるという特徴もあります。山での実習などの時は先生方についていくのに結構必死です(笑)。生物学科は、そんな知力体力を兼ね備えたかっこいい先生方がたくさんいる魅力的な学科です!

    東大理学部生物学科で勉強した先はどうなるの?

    生物学科を卒業した学生のうち9割がたは大学院に進学しているという現状です。

    残りの1割の人は本当に様々な業種で就職していきます。大学院を出た後は、博士課程に進んでもっと研究を続ける人、企業などに就職する人、あまり偏りなく分かれるのではないかと思われます。企業に就職する人の中では研究職につき、大学での学びを活かしたりもできるでしょう。また、博士課程に進むとさらに大学に残って研究を続け、ゆくゆくは教授まで登りつめる、なんて人もいるでしょう。

    自分がどれだけ研究者に向いているか、実際に研究に携わってみて、時間をかけて考えなければわかりません。研究がどんなふうに面白いかも実際にやってみなければわかりません。かくいう私もまだまだ研究の域に足を踏み入れていないのでわからないのです。実践あるのみという印象です。

    最後に

    生物学に限らず、研究という分野は世間的にもなかなか厳しい職業であるというイメージは強いのではないでしょうか。かつて自分の中でも、研究費をとるのが難しい、薄給であるなど、どうしてもマイナスのイメージが先行していました。しかし、特に生物学科の先生たちをみてみると皆ロマンを追い求めながらスマートにかっこよく、かつ泥臭く研究をされている方々がおり、こう方々に世界の学問が支えられているのだなと思うと強い憧れの念が湧いてくるものです。

    一度研究という世界をじっくりのぞいてみたい人、生物学にどっぷり浸かりたい人、少しでも生物に興味があるなと思う人はぜひ、理学部を検討してみて欲しいと思います!

  • 【東大医学部】医学の入り口を覗いてみよう

    【東大医学部】医学の入り口を覗いてみよう

    はじめに

    こんにちは、医学部医学科3年の大瀧と申します。今このページをご覧になっている方は、将来医学部への進学を真剣に考えている高校生から、「東大医学部ってどんなとこだろう」というちょっとした興味でページを開いた方まで様々だと思います。医学の勉強を始めてまだ約1年という私の書く拙い文章ですが、少しでも医学というものへの関心を深めていただけたら幸いです。

    医学部とは

    東大医学部には、医学部と健康総合科学科という2つの学科があります。

    医学科

    医師免許を取得し、医師として活躍する人を養成する学科です。
    いわゆる理科三類に合格した人たちはこの道に進みます。
    詳細は後述します。

    健康総合科学科

    詳細は健康総合科学科のHPに譲りますが、健康に関することを幅広く扱っており、大きく分けて3つのコースに分かれています。

    環境生命科学専修

    基本的に生物学を勉強しますが、理学部生物学科との違いは「ヒト」に完全にフォーカスを当てていることです。ミクロからマクロまで多様な視点で「ヒト」の研究をしているところです。

    公共健康科学専修

    いわゆる「疫学」と呼ばれる分野を勉強できるところです。薬や予防のためのワクチンがどのくらい効いているのかを調査したり、調査から得られたデータを解析する手法を学んだりできます。予防医学の重要性は海外で特に注目されている分野でもあります。

    看護科学専修

    看護師を志望する方が選ぶ専修です。東大の場合は免許の取得に止まらず、栄養学や心理学に社会や文化、環境といった視点を加えて「人間が関わること」を広く勉強し、世界で活躍する人の養成を目指しています。

    いずれの専修にしても最終的には「ヒトの健康」に落ち着きます。東大生の中でも「どんなことやってる学科なんだろう」と思っている人は少なくないと思いますが、調べるとなくてはならない学科の1つだとわかります。

    医学科で勉強すること

    ここから先は医学科に焦点を当てて話を進めていきます。

    医学科の勉強は大きく分けると、基礎医学、臨床医学、社会医学の3つの分野からなります。

    基礎医学はヒトの身体(と病気を引き起こす病原体)のメカニズムを分子レベルから肉眼レベルまで多くの視点で理解する学問になる一方、臨床医学は実際に起こる病気というものをベースに症状や診断、治療方法などを理解していく学問です。そして各症状の背景には基礎医学の知識が基盤となっています。

    社会医学には1人1人ではなく集団をターゲットとして病気の発生原因の特定やその予防に務める疫学や、死体の解剖から死因を特定したりDNA鑑定を行う法医学などがあります。

    東大では特に基礎医学の研究者を養成することに力を注いでいるため、4年生修了後から一時的に医学部を休学して博士課程に飛び研究に専念できるPhD-MDコースや、日々の講義や実習による授業とは別に研究活動を行うMD研究者育成プログラムなどのシステムもあります。また、自然科学の純粋な興味や疑問から始める基礎研究に対して、「この病気を治せないだろうか」という問題提起からアプローチを始める臨床研究というものもあるのですが、臨床研究者を養成するためのプログラムも東大では用意されています。

    卒業までの流れ

    C1・C2(1年生〜2年生の夏)

    晴れて理科三類に合格し、入学した新入生にとっては駒場キャンパスでの1年半が息抜きの期間となっています。他の科類の学生と一緒に教養科目(高校の数学や理科や英語の延長などなど)を勉強しながら、自分の趣味やバイトに明け暮れている学生が多いですね。
    一方、東大では進学選択という制度によって理科三類以外の科類からも定員は少ないですが医学科に進学することが可能になっています。ただし、人気のある学科なため大学での成績が良くないと入れません(私も理科二類から進学した1人で、駒場では頑張って勉強しました)。文系から理転する人もいますが、本当に凄い人たちです。

    M0(2年生の秋〜2年生の冬)

    ここからは本郷キャンパスで本格的に医学科の勉強が始まります。以降は基本的に全ての授業が必修(選択ではなく必ず受けなければならないということ)になります。
    せっかくですので、執筆当時(3年夏)までに勉強したことを簡単に紹介させていただきます。
    M0では3年への準備段階として、主に生化学と組織学を学びます。

    生化学

    化学とありますがどちらかというと細胞分子生物学という分野になります。数年前にノーベル賞受賞で有名になったオートファジーの仕組みや、DNAの複製・転写・翻訳のより詳細な機構(高校生物の延長ですね)、糖・アミノ酸・脂質がどのように代謝されるのかなどをここで勉強します。

    組織学

    身体の中の筋肉や神経、皮膚などがどのような細胞から構成されているのか、そして各器官(肝臓とか、腎臓とか、腸とか)のミクロレベルでの構成とそのはたらきについて勉強します。顕微鏡で観察しながらスケッチもします。

    他には、患者への薬の効き目などのデータを処理して分析する方法や、ヒトの遺伝学、動物実験を行うにあたって注意することとかもこの時期に勉強します。

    また、学生少人数と臨床の先生によるグループワークの授業もあり、「このまま放っておくと病状が悪化してしまう患者さんが通院してくれなくなった」などのケースに対して自主的に調べたり話し合ったりすることもあります。

    M1(3年生)

    3年生ではさらに基礎医学における様々なことを学びます。

    解剖学(マクロ/脳神経)

    約2ヶ月かけて数人1グループで1人のご遺体(本物のヒトです!)を解剖していきます。実物を生で見て触ることを通して血管、神経、筋肉の向きや走行、はたらきを理解していきます。ここではとにかく身体中のいろんな解剖学用語を日本語+英語/ラテン語(将来英語で論文を読んだりするときのために)で覚えることになり、暗記の負担は膨大ですが、実際の疾患と関連づけをしていく(例えば、この神経がダメになるとこことここの筋肉が収縮しなくなり、肘が曲げられなくなる、とか)ことによって理解が深まるので私は楽しかったです。

    解剖のラストは脳になります。脊髄や大脳の肉眼での観察に加えて、ミクロレベルでの細胞の構造についても勉強します。記憶で有名な海馬や感情に関係する扁桃体もここで勉強します。

    微生物学

    ここでは目に見えないような微小な生物について勉強します。ヒトの体内には実は多くの細菌が住み着いていますが、その関係が共生ではなくなると病気という形で表れます。具体的には細菌やウイルス、寄生虫がどうやって人の体内に侵入するのか、毒素はどうやって分泌され、人にどのように及ぼすのか、どんな治療法があるのかなどを勉強します。「インフルエンザウイルスのワクチンにハズレの年が生じてしまう理由」といった私たちに馴染みのある話題から、世界三大感染症の「エイズ・結核・マラリア」まで取り扱われます。

    この他に夏までに勉強することとしては、高校の生物で習う免疫の延長に相当するものがあります(免疫学の先生方、省略してごめんなさい)夏休みが明けると、いろんな視点で体内の仕組みを維持すること(例えば心臓の拍動であったり、ホルモンの分泌によって身体の調子を整えたり……恒常性といいます)を勉強する生理学や、薬が病原体にどのように作用するのかを勉強する薬理学、病原体や癌が分子レベルでどのように作用するのかなどを勉強する病理学などが待っています。

    M2(4年生)

    M2になると臨床科目の講義が始まります。外科、内科、小児科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、産婦人科、皮膚科、整形外科、精神科などなど…私にも未知の領域ですね。

    11月にはCBTという全国の医学部生が一斉に受けるコンピュータを使った選択式のテストと、OSCEという診察や救急の実技試験があります。ここをクリアすることが医学部生の1つの重要な山場と言われています。年明けからは病院実習が始まり、今まで勉強してきたことと実際の現場の様子がつなぎ合わさっていきます。実際に医者になると患者さん1人1人と話すことのできる時間は限られてくるので、この実習期間は患者さんの声をゆっくり聞くことができる貴重な時期だとも言われています。

    M3・M4(5,6年生)

    M2の1月から始まる実習の続きになります。
    なお、6年生になると東大では海外の病院で実習を受けたり、東大の病院やその他の病院でも特定の科でもっと深く実習を受けたり、M1でやった解剖を臨床を学んだ上でもう一度やり直したりできる期間があります(どれをやるかは自由に選択できます)。
    そして卒業前には医師国家試験があり、合格するとようやく医師免許を手にすることができます。

    卒業後

    卒業後は多くの学生が初期臨床研修といってマッチング(就活の医学部生バージョンと思ってくれればいいです笑)で決まった配属先の病院で2年ほどいろんな科を回って研修をします。その後は専門の科を選んでさらに2,3年その科を究めることになり、そこまで進んでようやく一人前の医師と認められるかな…?といった感じです。
    基礎研究の道を選ぶ人は、卒業後大学の博士課程に進むことが多いです。そしてそのまま所属の研究室で研究を進めていくことになります。もちろん、ここで研究向いてないなと感じた人は(保険で医師免許を取っているので)臨床の現場に戻ってくることもありますし、逆に現場での臨床医としての活躍から途中で退き、新しく研究の道に勤しむ人もいます。大学付属病院や総合病院で患者と向き合いつつ研究も少しずつ進めている方もいます(とはいっても実際には両立は厳しく感じ、途中から臨床一本になる人が多いようですね)。

    最後に

    ここまでいろいろなことをつらつらと書いてきましたが、医師にとって知識を身につけることは勿論ですが、患者のことを本人の気持ちや家庭、経済的事情なども合わせて総合的に考えて接することができるか、現場で働く医師や他の職種の人たちといかにうまくコミュニケーションをとれるかが重要な要素になってくるのではないかと思います。

    私はまだ将来どんな方向に進むのかはっきりと決まっているわけではありませんが、勉強する中でその事は常に考え続けていきたいですね。

    将来医学部を少しでも考えている高校生の皆さんは、(科学的に完全に正しいかは置いといて)最近流行りの医療ドラマや小説に目を通したり、ニュースで出てきた病気についてスマホで調べてみたり、病院に行くことがあれば診てくれたお医者さんの様子を観察してみたりすると、ちょっとは医学というものに対して距離が近くなり、新たに気づくこともあるかもしれませんよ。

    最後までお読みいただき、ありがとうございました!